新型コロナ禍対応入試の可能性

 東京私立御三家のように、男女ともに入試は1回だけという学校も複数回の実施を余儀なくされると、どのように合格基準を設けるが問われることになる。試験時間の短縮や科目数の減少という流れになれば、合否ライン上の受験生は増加するだろうから、その線引きは実に悩ましくなるだろう。

 受験日の変更という点では、1月31日から大雪が降り続き、2月1日の交通機関が大幅に乱れた1992年入試の例がある。このとき、開成は1日の入試を2日に延期した。その結果、ダブル出願していた受験生が麻布と開成の両方合格という珍事も起きたようだ。

 もし、2月前後に感染の第2波、第3波が訪れたら、もはやお手上げになりかねない。

これまでインフルエンザに罹患(りかん)した受験生は、学校によっては保健室で隔離して受験させることも行われてはいたが、本来は外出してはいけないことになっている。

 新型コロナウイルスの場合、罹患し受験不可となった場合、その影響は甚大だ。代替手段はないのだろうか。

 例年、一般入試に先駆けて行われているのが帰国子女を対象とした帰国生入試である。2021年入試ではオンラインを活用したAO的な入試を増やさざるを得ないといわれている。

 少なくとも難関上位校の中学入試は学力試験一本できた。それがにわかに変わるとは考えにくい。

 一方、中堅校以下の学校では毎年のように趣向を凝らした新しいタイプの入試が行われている。新型コロナ禍対応のプレゼン型のような新しい入試が生み出されてくるかもしれない。

 最後に2点付け加えておきたい。

 「これは私見ですが、通学時間が感染リスクを高めることを考えると、通いやすい距離にある学校に公立私立を問わず集まるという地域性も高まり、それに伴う進学支援措置という動きが地元の行政から出てくるかもしれない。

 もう1点、9月入学の動きは大学にとってメリットが大きいので議論は進むかもしれない。問題は4月からの一斉就職くらいでしょうから。

 一方、小中高校では、学びの継続ということを考えると、5カ月間のギャップが生じることになる。これをどうするのか。実は中高一貫校には水面下で海外、特に中国からの入学生が増えているという実態もある。こうした点も考えれば、9月入学という流れは将来的にはありうるのかもしれないでしょうが」