島崎亮浩(しまざき・あきひろ)
建築委員会委員長、武蔵高等学校中学校理科(物理)教諭
1978年東京生まれ。都立武蔵高校、東京学芸大学教育学部理科専攻卒業。専門は量子光学。半年間の休学で秋卒業となったため、武蔵の採用試験にタイミング良く合格、採用条件にあった修士号を取得するため、1年間の休職を含め4年かけて母校の大学院に通った。2021年度より進路指導委員長。
創立100周年に向けて「武蔵」が造った新校舎
創立以来、サイエンス教育に定評のある武蔵高等学校中学校。その伝統と理念が凝縮された新しい校舎が理科・特別教室棟である。90年にわたって続けてきた太陽黒点の観測、受け継いできた標本類や実験器具なども生かし、本物を見ながら実験や観察により手を動かして学ぶ。構内にあふれる自然にも学ぶ仕掛けがたくさん隠されている。
――これがフーコーの振り子ですね。
島崎 4階の天井から15.97メートルのワイヤーでつり下げています。振らせることで地球の自転を体感することができます。高校の授業では、振り子がピンを倒す時間を測定して緯度を計算します。
――実際にやってみるわけですね。先日の地震でだいぶ揺れたのでは。
島崎 長い周期の地震の時は、振り子が揺れていることがあります。実は、この文字盤の下には地震計が設置されています。ここで地面の揺れを観測します。また、データが送られる3階の地学準備室の隣、地学実験室の床にも同じものが設置されています。両方を記録することで、建物自体の揺れを推定することができます。
柱に沿って、水気圧計の塩ビ管も垂直に取り付けました。寒暖差で管がところどころ変形していますが、それでも正確に測定できるのはなぜか、これを見ながら考えたりもしています。
――新校舎は他校からの見学も多かったそうですが、いろいろな仕掛けが隠されているのですね。
島崎 気象観測ということでは、東門近くのテニスコート脇にある百葉箱や屋上の観測ロボットからも逐次データが送られてきます。2012年までは、構内にアメダスの練馬観測所がありました。その流れを継ぐ目的もあり、いまも続けています。
――天体観測も行っていると伺いましたが。
島崎 屋上に2台の大型望遠鏡を設置した天体観測室があります。望遠鏡が置いてあるドームと観測制御室を上下に分けました。
太陽黒点は太陽観測部員が毎日観測しています。ドームの開口部は、雨が降ったときには自動的に閉まるようになりました。昔はドームを開けたまま外出し、急な降雨で中が濡れてしまったことも一度ではなかったようです。
また、ドームの隣には生徒が屋上に出なくても雲量を見ることができるよう気象観測窓を設けました。夏は暑いですが(笑)。
――階段を上って仰ぎ見るわけですね。こちらのテーブル(台)は何でしょう。
島崎 これは私の専門である量子光学の光学実験に用いる除振台です。学校として、教員の研究も後押ししてくれるのもありがたいです。教員が手作りした装置もここにはいろいろあります。
――先生方の工夫がこのスペースに詰まっている。
島崎 新校舎の建築はいろいろありましたが、この天体望遠鏡をどのように設置したらいいのか、床の高さや設置の方法など、同じ物理の川端拡信先生と計算していたときは、とても楽しかったですね。
――では、次にご苦労された新校舎のお話を伺いましょう。