「この子たちは何回、この道を行き来したのかな」と恩藏学校長が感慨にふける、初等部の児童が6年間行き来する構内の一本道

付属校のあり方を保護者に伝える

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、88年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――大学との違いは保護者が背後にいるというお話でしたが、その点で何かお感じになったことはありますか。

恩藏 新任校長として、実業学校としての方針を伝えるため、初等部の学年別保護者会にすべて出席しました。実は私の子どもも、かつて初等部からお世話になっていました。正門から初等部校舎につながる一本道を何回通るのだろうかと、子ども目線になって考えてもみました。

 できたばかりの頃の初等部は、「非常によく考えられた教育内容なので、全部お任せください、塾には通わせないで」という方針でした。私もそれを真に受けていたのですが、中等部に受験勉強をして入ってきた生徒に比べると、初等部から内部進学する生徒はどうしても遅れを取りやすい。そんなこともあり、子どもの在学中に初等部の教育方針が変わりました。

――保護者としてのご経験もあった。

恩藏 そんな経験もあったので、学校に全部お任せではなく、小さい子どもは学校とご家庭が一緒になって教育に取り組んでいってほしい、というお話も保護者会でしました。

――付属校のご家庭は、中学校に上がる前には「中学受験ですごい生徒が入ってくるから」と言われ、高校に上がる時にはやっぱりすごい生徒が入ってくると、常に脅されている(笑)

恩藏 まさにそうです。内部進学者は受験で入ってきた生徒に負けてはいけません。商学部長をしていたとき入学式で、「何割の学生が4年間で卒業できるか」というお話をしました。当時は4分の3くらいでした。残りは、資格の取得や留学など前向きな理由の学生もいましたし、成績不振で留年する学生もいました。

 これは早実でも全く同じです。実際、中等部から高等部、高等部から大学へと進めない生徒もいます。一度入ったら、「最強のカードを手にした」からエスカレーターで上がれるわけではないという実態も知っていただかないといけません。ある保護者から、「そういうことを言う校長は初めて」と言われました。

――大学からご覧になっているので、そういったお話ができるのでしょうね。

恩藏 初等部から入った生徒の中には、ずば抜けた子がいます。早稲田には医学部がないこともありますが、東大の理IIIに進学した生徒もいました。

――早稲田の系列校の中でも、大学から見ると早実がピカイチと言いますものね。

恩藏 らしいですね(笑)。政治経済学部でもお褒めの言葉をいただきました。大学では入試タイプ別にすべてGPA(学生の成績評価値)を取っています。それを見ると、早実の卒業生はいいようで、トップクラスに位置しているようです。ところが、お叱りを受けてしまう学部もありました。

――理工系ですか。

恩藏 理工系には成績上位者が行く傾向があります。そうではなくて、生徒の志望とは異なる学問領域に進学したような文系の学部です。

部活動のポスターも力作ぞろい