今回は、前回コラムでも予告したとおり、自動車メーカーの2009年9月期(10年3月期第2四半期)決算から「自動車産業が日本経済へ及ぼす影響」について検証していきたい。

 過日、知人がエコカー減税を利用してトヨタの「プリウス」を購入したので、試乗させてもらった。まさに「走るサロン」といったところだ。会社の昼休みにはプリウスにこもり、ノートパソコンからネット証券に繋いで後場の指し値をいれるというのだから、車内はトレーディング-ルームも兼ねていた。

 妻子持ちの彼が「会社や家にいるよりも、クルマで暮らすほうが楽しい」と発言していたのには危ないものを感じたが、コンビニを渡り歩いていれば何不自由ない生活を送れるのも確かだろう。「鉄は国家なり」といわれた時代は過去のものとなり、現在の日本経済は「クルマ立国」とも呼べそうだ。愛知のトヨタが風邪をひくと、栃木のキャベツの価格が暴落してしまうのではないだろうか、と危惧してしまうほどである。

決算発表で頻出した
「固定費削減」に疑問符

 トヨタの影響がキャベツに至るまでの因果関係をたどるには大変な分析作業を必要とする。しかし、トヨタをはじめとする「自動車産業の“クシャミ”」が今年の日本経済にどれだけの影響を及ぼしたかは、09年9月期(10年3月期第2四半期)の決算によって知ることができる。

 特に今回の決算で、筆者が注目したキーワードは「固定費削減」だ。どれだけ登場するのだろうかと、過去のスクラップ記事を拾い集めたところ、「出るわ、出るわ」でウンザリして、途中から読むのをやめてしまった。

 参考として、09年3月期後の40日間を対象に「固定費削減」で調べたところ41件。それに対して、09年9月期後の40日間で同様に調べたところ58件もあった。半年間で約1.4倍である。

 固定費は、「売上高の増減に比例しないコスト」と定義される。また、「削減しようと頑張ってみても、そう簡単に削減できない」という特徴がある。例えば、JALの再建策で最も紛糾している「年金問題」もその1つ。年金を含めた人件費の多くが頑強な固定費で構成されるため、あれだけ揉めているのだ。

 それがどうして、半年間で「固定費削減により業績回復の兆しが見え始めた」と臆面もなく決算発表できるのだろうか。ストライキの1つも起きずに削減できるコストは、厳密な意味での固定費とはいわない。10年3月期の本決算では、再び腰砕けになる予感がする。