ゼネラル・モーターズ(GM)再建計画の再提出期限である6月1日が迫ってきた。債務削減を求めるGM側の再建案は、債権者からの反発も大きく、「連邦破産法第11章、“chapter11”(チャプターイレブン)の申請」が非常に濃厚だ。また申請は、「利害関係者との事前調整を経たチャプターイレブン申請」になるとの見方もある。

 GMがチャプターイレブンの申請をした場合、再建手続きはどのように・どれくらいの期間で終結するのだろうか。「事前調整型のチャプターイレブン」を採用する際のGM再建の道のりを、通常のチャプターイレブンや日本の民事再生法との比較を通じて考えていきたいと思う。

「事前調整型」チャプターイレブンで
再建計画がスムーズに

 チャプターイレブンの申請は、ブランドイメージに傷をつけ、債務のカットが難しくなるというデメリットを招く。経営者ならばできれば避けたいと思うはずだ。だが、申請以外もはやあり得ないほど、GMの債権者との交渉は難航している。

 チャプターイレブンを申請しない場合(現在の状態)、再建計画の成立には原則として債権者全員の同意を得る必要がある。しかし、チャプターイレブンを申請すると、同意のハードルが下がる。有担保債権者、優先無担保債権者、一般無担保債権者など債権の各クラスにおける債権者数の過半数かつ債権額の3分の2以上に賛成されれば、計画は承認されることになるのだ。

 つまり、ある程度大口の債権者の合意さえ得られれば、計画を進められる。また、たとえ債権者の集団(クラス)の中に当該計画に強行に反発する集団があったとしても、他の集団で承認するのに必要な債権者数と金額を満たして、当該計画が公正かつ衡平であれば裁判所の認可を得て再建計画の受け入れを強制させることもできる。このように、一定の債権者群に対して強制的に計画が実行できることを「クラム・ダウン」という。

 GMは労働組合との合意も難航しているという。しかしチャプターイレブン申請後ならば、一定群の債権者から合意を得て、裁判所が公平と認めさえすれば、必ずしも労働組合の同意は必ずしも必要ではない。ここにも「クラム・ダウン」の原理が働き、労働組合に強制力を持って計画を進めることができるわけだ。