今月9日、経営破綻したパシフィックホールディングス(以後パシフィック)傘下の不動産投資信託法人(REIT)、日本レジデンシャル投資法人(以後日レジ)のスポンサーが国内勢4社に絞り込まれたと報道があった。三菱地所、野村不動産、伊藤忠商事…という国内大手企業が手を挙げているそうだ。また、J-REIT初の破綻をしたニューシティ・レジデンスも、先月7日に投資ファンドのローン・スターをスポンサーに選定したと発表しており、親会社の選定が投資家たちの注目を集めている。
REITは、一般の株式会社と異なる特有の性質があるため、スポンサーである親会社の役割はとても大きく、影響を受けやすい。親会社が破綻する事態になれば、REITの投資口は売られ、価格が下落していくと考えられるはずだ。
しかし、日レジはパシフィックが破綻するという大きな局面で、その影響が投資口価格(株価に相当するもの)に現れてなかった。パシフィックが会社更生法を申請した3月10日時点の日レジ投資口価格は39950円で、最安値の35350円から4600円高く、もはや上昇局面にあり、その後もほぼ一貫して上昇し、5月14日の終値では179800円と最安値の5倍以上の価格となっている。本来スポンサーの影響を大きく受けるREITにもかかわらず、なぜスポンサーである親会社が破綻した後に投資口価格が上昇していたのだろうか。株式会社と異なるREIT特有の性質と、それゆえの親会社の役割とは何かを明らかにしながら、説明していこう。
資金調達がREIT成長のカギ
不況下では親の力が必須
REITとは、投資家から出資された資金を元に賃貸ビル・商業施設に投資をし、その収入から経費を差し引いた利益の9割以上を投資家に分配することによって(実際は、ほぼ全額を配当する仕組みとなっており、配当性向は、ほぼ100%となっている)、法人税が免除される非課税の不動産投資事業の器だ(第49回参照)。利益を内部留保することができないため、成長するためには常に外部からの資金調達を必要としている。資金調達の方法としては(1)投資口の公募や第三者割当による増資、(2)投資法人債の発行、(3)銀行借入の3種類が挙げられる。
安定的な賃料収入が見込めるため、株式に比べると収益の変動幅は本来小さく、「ミドルリスク、ミドルリターン」の投資商品と言われてきた。つまり、長期的な安定した投資対象だった。当初は、年率5%近くの高配当が得られ、一躍人気の金融商品となっていたのだ。
REITが初めて東証に上場したのは2001年9月だったが、04年頃から不動産バブルの追い風を受けて、07年5月末には東証のリート指数は当初基準価格の2.5倍を超え、時価総額も7兆円近くに。しかしその後、サブプライムローンの問題による不動産価格市況は急速に悪化する。さらには投資の原資に占める借入金の割合が高いこともあり、09年3月末には時価総額が2兆5000億円とピーク時の3分の1強になってしまった。資金調達が必要なリートは、その調達方法に苦戦することになる。
市況が好調だと、公募増資は集まりやすく、銀行は貸付・投資法人債の引き受けをしてくれる。一方、市況が悪化すると、公募増資が集まらないだけでなく、銀行も資金の回収が見込めないため貸付・投資法人債も引き受けをしない状況になる。そこで、保有している不動産を売却して資金を作ろうとするが、不動産価格の低迷で売却できない。すると最終的にREITが頼れるのは、親会社だけになるのだ。親会社自身が資金を持っているか、又は親会社に信用力があるかどうかがREITの資金調達にとって非常に重要となる。