
永沢 徹
第53回
業績悪化に苦しむ企業は、もはや非正規社員だけでは人件費の調節をつけられず、正社員や内定者にまでリストラのメスを入れ始めている。法的に見て、「整理解雇」と「内定取消」には共通する問題点があるといえる。

第52回
株式公開買付け(TOB)期間の度重なる延長に買収資金の頓挫など、迷走を続ける「シャルレMBO」。このドタバタ劇を見て思うのは、本件によってMBOの潜在的な問題点があぶり出されたということである。

第51回
11月7日、パナソニックの三洋電機買収が発表された。パナソニックの自己資本比率はトヨタすら凌ぎ、しかも自己資本のかなりの部分が「現金」で占められている。今回パナソニックは、その潤沢な「現金」を元手に三洋電機を買収するという。これまで事業会社による買収といえば合併や株式交換が多用されてきたが、新株を発行させるか自社株を差し出すかはともかくとして、従前の株主の価値を希薄化させることになり、現在の株安の状況下では結果的には高くつく。今後はキャッシュ・リッチな事業会社がM&Aの主役になりそうだ。

第50回
10月28日に約26年ぶりの7000円割れを記録し、リーマンショック以降、大幅な下落を続けてきた日経平均株価。この予想を上回る下落は、各企業の財務状況に非常に大きな影を落としている。それは「株式持合い」による損失。企業によっては、その損失額が当期の利益のほとんどを食い潰してしまうほどの規模にまで膨らんでいる。第2四半期決算(9月の中間決算)において、企業が続々と保有株の損失を計上。業績下方修正の発表が相次いでいるのだ。

第49回
サブプライム問題に端を発した信用収縮の余波がついにここまで来た。それは、J-REITの初の破綻。ニューシティ・レジデンス投資法人が資金繰りに行き詰まり、今月9日、東京地裁に民事再生法の申請を行なったのである。これは2001年の「REIT(上場不動産投資信託)」市場創設から7年目にして、初めての破綻となる。ただ、今回のJ-REITの破綻は、一般の事業会社との破綻とは性質が異なる。今回はそれについて考えてみたいと思う。

第48回
野村によるリーマン買収。さらには、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)によるモルガン・スタンレーへの巨額出資。相次ぐジャパンマネーによる米国金融機関の再編で、「日本勢の逆襲か?!」という声も聞こえてくるが、いずれにしても野村とMUFGの両社は、海外拡充を狙って“勝負”に出たことは間違いない。その中でも注目すべきは、野村によるリーマン「欧州・中東部門」の買収である。この買収の最大のポイントは、買収金額がたった“2ドル”であること。一見、タダ同然に見える買収であり、ついその金額ばかりが注目されてしまいがちである。

第47回
日本電産による東洋電機への買収提案。これまでは「救済型」の買収を続け、会社再建を行なうことで手堅く成功してきた日本電産だが、今回は様子が違う。「相手の同意なき買収提案」に初めて打って出たからだ。

第46回
私が今回のリーマン破綻で強く感じたのは「国際倒産手続きの問題点」。経済はグローバル化しているにも関わらず、グローバル企業の倒産手続きは国ごとに行なわなければならないのが現状である。

第45回
ゲームソフトの大手スクウェア・エニックスがテクモに買収提案を行なった。しかしテクモはそれを拒否し、コーエーとの統合協議開始を発表した。国内市場の成長鈍化に悩むゲーム業界で生き残りの再編が始まっている。

第44回
株価1円をつけていたトランスデジタルが9月1日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。株価が1ケタ台になってからも市場に2ヵ月以上居座り続けた同社は“上場に値しない”企業であったといえる。

第43回
異様なまでの高騰を続ける鉄鉱石。世界的な鉄鋼石争奪戦が始まっている。ついにはブラジルの鉱山を手に入れるため、日本の大手鉄鋼メーカー5社は異例の大連合を組んだ。まさにオールジャパン体制である。

第42回
不動産会社の破綻が止まらない。今回のアーバンコーポ倒産もその1つであり、今年最大の倒産となった。同社は4月以降一気に資金繰りが悪化。そのためこの3ヵ月間で資産を売りまくっていたようだ。

第41回
近年、創業者一族の都合による『名ばかりMBO』が増えているような気がしてならない。外食チェーン大手「すかいらーく」創業社長に対する大株主の退任要求騒動は、それに対する警鐘ではないかとさえ思える。

第40回
TBSは物販事業強化のため、旧ソニープラザを傘下に持つスタイリングライフHDを買収することを発表した。というのも近年、広告収入の減少が続き、本業である放送事業の売上が低迷しているからだ。

第39回
中堅デベロッパーのゼファーが民事再生手続開始の申立を東京地裁に申請した。今年に入ってから上場企業の倒産が相次いでいる。中でもゼネコン、デベロッパーといった不動産関連企業の倒産が圧倒的に多い。

第38回
コンビニ最大手セブン-イレブンの加盟店オーナーらが、本部を訴えた訴訟で注目の判決が出た。驚くことにセブン-イレブンでは、商品仕入れにおいて加盟店は仕入れ値を知らされない仕組みになっていたという。

第37回
日本のミネラルウォーターの先駆け的存在である「六甲のおいしい水」(ハウス食品)が、公正取引委員会から景品表示法違反で排除命令を受けた。この件をはじめ、近年、大手企業による景品表示法違反が急増している。

第36回
自他共に認める驚異的な成長を遂げてきたヤマダ電機。しかしそのヤマダ電機に対し、公正取引委員会は独占禁止法違反で排除措置命令を出した。取引先の従業員を「タダ働き」させていたというのだ。

第35回
ニッポン放送争奪戦“影の主役”といわれた米投資ファンドのサウスイースタン社。このサウス社が、今度は損保業界の再編を仕掛け始めた。社長の再任をめぐり、日本興亜損保と対立を深めているのだ。

第34回
ライブドア株主集団訴訟の1つで、95億円を超える賠償金が認められた。しかし、株の損害を認めるにあたっては難しい問題がある。それは損害額の算出。裁判でそれをどう立証するかがポイントとなるのだ。
