
田岡俊次
第30回
6月8日の朝日新聞朝刊に「安全保障とは」という問いに対し「国が安全でいられるよう軍隊で守ること」との答えが出ていて、唖然とした。安全保障は軍事力だけではなく、外交や情報、経済関係、信頼醸成など多くの要素が加わって確保されることは常識だ。

第29回
総理は先日の記者会見で、夫婦が幼児を抱いている特大のパネルを示して、同盟国・米国の艦船が日本人を救助しているとき、今の憲法解釈では自衛隊はこれを守ることができないと訴えた。だが、この論は4つの点で重大な誤りがありほとんど嘘、という外ない。

第28回
集団的自衛権を巡る議論のなかで、現行の法制度でも行えることをあえて「グレーゾーン」とか「集団的自衛権行使」と称するのは、集団的自衛権行使に執着する安倍総理の面目を保ちつつ、公明党も反対しにくい事例を探し求めた苦肉の策か、とも思われる。

第27回
日米米首脳会談では、オバマ大統領が「尖閣への安保の適用」を表明したことばかりが報道され、自民党も「満額回答」と小躍りしている。だが、共同記者会見を子細に検討すれば、大統領が安倍首相に日中関係の改善を強く求めていることが伺える。

第26回
集団的自衛権行使の容認を巡る議論が迷走して来た。第1次安倍政権で検討された「4類型」と今回示された「5事例」を検討すると、そのことが浮かび上がる。とすれば、「集団的自衛権行使容認」の箱だけでもいま作っておくのが安倍政権の狙いと映る。

第25回
ウクライナ問題の次の焦点は、ロシア編入の動きが東ウクライナにまで広がるかどうかだ。そうなれば米国・西欧は本格的な経済制裁に動かざるを得ず、世界恐慌をも引き起こしかねない。回避できるかどうかは、ひとえにウクライナのロシア系住民の自制心にかかっている。

第24回
安保法制懇が挙げる集団的自衛権かかわる「4類型」「5事例」を検証すると、あまりにも問題点、弊害、危険の検討がおろそかだ。首相の私的諮問機関の報告が閣議決定され解釈変更が行われるのであれば、それは「法治国家」ではなく「人治国家」とのそしりを免れないだろう。

第23回
ウクライナの混乱が続いている。同国内を巡ってはのロシアと米国・EUという対立の構図になっている。だが、クリミアがウクライナに帰属した経緯や民族の構成をみれば、無理にくっつけておくよりも、円満に“協議離婚”をする方が内戦よりはるかに合理的だ。

第22回
1月下旬に開催されたダボス会議で、安倍首相が現在の日中関係を第1次世界大戦前の英独関係になぞらえ、物議を醸した。折しも今年は第1次世界大戦勃発から100年。欧州では第1次、第2次の2回の大戦を経て、100年前とは打って変わって、大幅な軍縮が進んでいる。

第21回
いよいよ7日からロシアのソチで冬季オリンピックが始まる。だが、チェチェン紛争で16万人がロシア軍に殺され、夫や息子を失った女性たちは仇討の自爆テロでロシアに一矢報いようとしている。まさに「薄氷を踏む」思いの冬季オリンピックである。

第20回
1月20日、イランは欧米など6ヵ国と合意した核問題の包括解決に向け、その第一段階の措置の履行を開始した。イランと米国が和解すれば、小型冷戦」の終了とも言える歴史的出来事だ。イランと友好関係を保ってきた日本にとって望ましい状況となる。

第6回
2014年を予想する上で、ポイントは何か。消費税増税の実施、緊張高まる東アジア外交……。経営者、識者の方々に、14年を読み解くための5つののポイントを挙げてもらった。第6回は軍事ジャーナリストの田岡俊次氏。

第19回
安倍総理は昨年12月26日、突如靖国神社に参拝した。中国、韓国ばかりか米国までが“disappointed”という言葉を使ってこれを批判。日本包囲網という様相を呈した。ソ連の後任に中国を擬し「日米同盟強化で中国に対抗」しようという認識は、もはや時代遅れだ。

第18回
発足したばかりの国家安全保障会議がその初仕事として、「国家安全保障戦略」など3つを決定した。その内容を見ると、「目標」と「手段」が本末転倒の関係になっていたり、国際情勢の変化を踏まえない「中国包囲網」を打ち上げたり、水準の低さを如実に示す格好となった。

第17回
特定秘密保護法が参議院で可決、成立した。多くの国民がこの法律に対して、不安、疑問、怒りを抱いているが、実はこれまで存在した秘密保護法制でも、何でも秘密にできる。加えて特定秘密を扱う人たちに対する「適性評価」によって、人権侵害や公安警察権力の肥大化が懸念される。

第16回
中国は11月23日、突如尖閣諸島を含む東シナ海上空に「防空識別圏」を設定した。中国がそれを設定するのは自由だが布告の内容が粗雑で、まるで公海上空の広大な空域を領空同然に扱うような文面だから、他国からの非難が集中、中国空軍は大ドジを演じた結果になりそうだ。

第15回
1909年に日本の初代総理大臣・伊藤博文をで暗殺した韓国人、安重根の記念碑建立問題が、日・韓・中関係の新たな火種となっている。だが、日韓双方が「一方のテロリストは他方の英雄」との諺を胸中にとどめ、苦笑しつつ対応するのが良策と考える。

第14回
日中双方の軍の沖縄近海での演習が逆にエスカレートしている。自衛隊は島嶼防衛を掲げるが、最もカギを握る制空権では圧倒的な劣勢にある。にもかかわらず、島嶼防衛を掲げるのは、組織防衛と予算獲得のネタにするためだ。

第13回
「特別秘密保護法案」が国会に提出された。日本には「スパイ防止法」がないためとされるが、何よりも問題はその捜査・訴追能力にある。いまや情報漏洩は古典的なスパイ活動よりもサイバー技術の発達で起きる。その点でも今回の法案は古色蒼然たる代物だ。

第12回
10月上旬のAPEC、ASEANで、安倍首相は中国の海洋進出に対して暗にこれを非難するような発言を行った。中国海軍は果たして、近隣諸国にとって脅威なのか。その実力を検証する。
