
田岡俊次
第11回
シリアの化学兵器問題は、同国が化学兵器の国際管理を受け入れたことで、事態は急転した。反政府軍の主力イスラム過激派を「共通の敵」として、その化学兵器を押収するために米、露、シリアが連合して戦う、という構図も生じかねない情勢となりつつある。

第10回
9月10日で日本の尖閣諸島国有化から丸一年が経った。中国政府は「領土主権は断固守る」と原則論を振りかざす一方で、「問題を棚上げすることが可能だ」とのシグナルも発している。この安倍首相はこの機をとらえて、関係改善の道に踏み出すべきだ。

第9回
オバマ米大統領がシリアに対する限定攻撃の承認を米議会に求める声明を出した。これは結果責任を議会にも負わせる妙手だ。だが、本当の問題は巨大な情報収集機構を持ちながら、過去何回も誤った判断を繰り返してきた情報伝達の仕組みにこそある。

第8回
安倍政権が憲法解釈を変え集団的自衛権を行使できるようにしようと、本格的に動き出した。だが、第2次大戦後の米国の戦争は米国の自衛のための戦争ではないから、もし日本が集団的自衛権行使を認めても、共同軍事行動を取るのは難しいだろう。

第7回
「中国包囲網」という語が日本の新聞、テレビでしばしば使われるが、現実を見ればこれにはほとんど実体がなく、将来も包囲網を作れる可能性は乏しい。第2次世界大戦前の日本で流行した「八紘一宇」のスローガンと同様の妄想ではあるまいか。

第6回
参院選で大勝した安倍政権にとり、TPPと並ぶ今後の最大の外交課題は対中韓関係だろう。対中国では尖閣問題を巡り、打開の糸口が見いだせない。だが、戦後の世界史を紐解くと、領土が激減した日本、ドイツが最も経済的な成功をおさめたことが分かる。

第5回
エジプトでは軍がクーデターで政権を掌握した。このエジプト軍の装備の大宗は米国製で、全くの米国依存。米国は親米軍事政権もより強硬なイスラム政権も認めることができず、微妙な立場に立たされた。

第4回
米・通信情報機関NSAの契約社員だったスノーデン氏による暴露が、欧米で大波乱を巻き起こした。米国の言い分は外国人の人権は無視と聞こえる。巨大な闇の権力NSAの生い立ちと正体に迫る。

第3回
自民党が「新・防衛計画の大綱 」の決定に向けて、敵基地の攻撃能力強化や海兵隊的機能付与を提言している。だが、議論の前提となる彼我の能力に対する知識・理解の不足がはなはだしい。そこには実現可能かどうかという「成算」の視点が欠けている。

第2回
安倍政権は「日本版安全保障会議(NSC)」の創設に向け6月上旬にも法案を提出するという。だが、その模範とする米国NSCの歴史は失策続き。情報収集にバイアスがかかっているからだ。

第1回
中国の公表国防費は過去24年間で30倍の規模になったと言われる。だが、いずれの国も経済の高成長期には同様に国防費を急増させている。冷静に判断するには、中国の経済や財政規模との比較が必要だ。
