白央篤司
「鯛をさばくのも落語の稽古になるがな」思い出の湯豆腐で落語家・桂吉坊が語る桂米朝&吉朝師弟の粋な“噺”
「きょうの気分で、鍋料理を作ってください」。筆者がそうお題を出すと、落語家・桂吉坊は豆腐と白菜だけの湯豆腐を作り始めた。人間国宝であり、上方落語の第一人者とも称される桂米朝に魅せられた桂吉坊は、米朝の愛弟子である吉朝の門を叩いた。そんな大師匠たちとの絆が詰まった湯豆腐を前にして、思い出話に花を咲かせる。※本稿は、白央篤司『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

「私が亡くなってもおいしいものを食べてほしい」障害を持つ娘と母の絆をつなげる“いつものトマト鍋”
秋となり、そろそろ鍋が美味しい季節だが、そういえば、よそのお宅ではどんな鍋を作っているんだろう。そんな思いから「名前のない鍋」巡りを始めた筆者が、今回お邪魔するのは、重い障害を持った子供たちや家族のために活動するNPO法人「ゆめのめ」の代表・大高美和さん宅だ。大高さんが作ったのは、嚥下障害を持つ娘も楽しめる「いつものトマト鍋」。娘を想う母の心が隠し味だ。※本稿は、白央篤司『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

「絶対同じ味にはならないんです」漫画家ニコ・ニコルソンが上京しても忘れられない“婆の味噌汁”
よそのお宅では、どんな鍋を作っているのだろう。そんな疑問を抱いた筆者が今回訪ねた先は、漫画家のニコ・ニコルソンのお宅。「ナガサレールイエスタテール」や「マンガ認知症」を代表作に持ち、現在でもさまざまな媒体で作品を発表し続ける多忙な彼女だが、食事は手を抜かない。この日作ったのはチルド餃子とミックス野菜を鶏ガラスープと酒で味付けした「名前のない鍋」。鍋の湯気の向こうに、上京してもなお記憶に残る故郷の婆(ばば)の手料理の記憶が香り立つ。※本稿は、白央篤司『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
