総予測2026Photo by Satoru Oka

日用品大手でヘルスケア大手でもある小林製薬は、2024年前半に表面化した紅麹サプリメント健康被害問題で糾弾され、25年は再建の途上にあった。会長と社長の座を占めていた創業家は退き、被害者らへの対応は今も継続中だ。特集『総予測2026』の本稿では、25年3月から社長を務める豊田賀一氏が、新小林製薬の方向性、大株主の創業家やファンドとの関係、日本航空(JAL)再建に携わった新会長が吹き込む新カルチャーなどを語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

紅麹の事案を反省し補償継続中
品質と安全に最優先で取り組む

――まず2025年の振り返りをお願いします。

 紅麹サプリメントの事案におきましては、多大なご心配をおかけいたしまして申し訳ございません。健康被害に遭われたお客さまへの補償をしっかりすること。それと、損害を与えた取引先もありますのでしっかりと補償させていただきます。これらを最優先にしてきています。25年もそれは変わっていません。

 事案の反省をし、品質と安全に最優先で取り組んでいます。具体的には、25年1月から組織をカテゴリー別から機能別に分け、そこでしっかりと専門性を高めるようにしています。再発防止へ、品質面で意識を高めていくこともすごく意識しています。それには教育ももちろんですが、私から週1回「ワンチーム通信」を発信しています。これは紅麹の事案を忘れずに品質と安全を最優先にやっていくということ、そしてワンチームでこの会社を立て直していこうということを発信する取り組みです。

 品質保証体制を強化するために人の手当てや、社内での異動もしっかりと行っています。第三者機関の監査を受けて、どこが足りなかったかをしっかりと見極め、一つ一つ手を打ってるところです。

 会社の立て直しとしては、私がリーダーとなって組織風土改革プロジェクトを進めています。「会社のどこに問題があったのか。風土のどこを変えていったらいいのか。でもこの風土は変えたくないよね」など、そういったことを話し合って、ありたい企業風土を決めて、行動規範に落とし込んでいく活動を1年間やってきました。

 小林製薬は「人はいい」とよく言われます。変な派閥もありません。でも現場で「これおかしいんとちゃうか」といった声があまり上がらなかったり、「声をあげてもしゃあない」みたいな風土が最近はあったりしました。これを変えていかなければなりません。

――紅麹の問題を受けて、サプリメント事業からの撤退は考えなかったのでしょうか。撤退ではなく地道に信頼回復を目指すのですか?

 地道に信頼回復をしていきます。サプリメント、健康食品の方はまだまだ可能性があると思っています。

――紅麹の問題は数字面でいうと対応コスト、あるいは売り上げ減として財務に響いてきたと思います。25年は徐々に回復してきていますか。

次ページでは26年の展望、新小林製薬としての中期ビジョン、元京セラ取締役で日本航空(JAL)再建に関わった新会長が注入する“稲盛イズム”、大株主である創業家や香港系ファンドなどについて語っている。豊田社長は今、小林家とどのような対話をしているのか。