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憧れの街に住む! 東京・神奈川編

異国情緒あふれる、横浜屈指の高級住宅街「横浜・山手」

並木浩一 [ダイヤモンド社 編集委員]
【第15回】 2008年1月25日
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横浜に住む人間が、「住みたい街は?」と問われて真っ先に思い浮かべるのがこの丘の上の住宅地だろう。そして、首都圏の人間は誰でも「横浜住まい」という言葉に、港をみおろすこの一角のイメージを重ねあわせる。「山手」…。外国人居留地として誕生し、いまなおエキゾチックな色を残す、横浜屈指の高級住宅地である。

 横浜市民でさえ、得てして混同しているが、住宅ゾーンとしての山手は2つある、と言っても過言ではない。1つは中区山手町を指す場合、そしてもう1つは、根岸線山手駅を最寄り駅とする一帯である(山手町の最寄り駅は、ほぼ全域がJR石川町駅である)。どちらも間違いではないのだが、この2つのゾーンは地価もまるっきり異なるので、「住宅を選ぶ」という観点で考えるときには注意しなければならない。逆にこの二つのゾーンの相違点が理解できれば、山手の住まい選びの第1ステップは越えたことになる。

幕末からの
外国人居留地「山手町」

山手町にある外国人居留地
山手町にある外国人居留地。洋館が立ち並び、資料館になっているものも多い。

 2つのゾーンのうち「山手町」である一帯は、幕末からの外国人居留地として生まれた街である。

 開国当初、交易に訪れた外国人たちは、いまの山手町一帯に居留していた。港にほど近い場所に、オフィスと住居をもち、いわば職住近接で暮らしていたわけだ。それが年を経てくると、外国人の間に港を見おろす丘の上に住みたいという要望が高まってきた。

 とくに商人の妻たちが来日する頃になって、環境がよく、広い住居への要求が強くなったのだ。時の政府は外国人が居留地以外に住居をもつことを禁じていた。結果として、山手の丘は居留地を拡大する形で、区画割りされて外国人にのみ賃貸(永代借地)されることになった。エキゾチックな山手のイメージはいまなお外国人の居住者が多いことにも起因しているが、最初は外国人しか住めないという条件があったのである。

 区画割りされた土地には1から番号がふられた。外国人たちは山手を「BLUFF」と呼び、住所を示すのにはブラフ35、ブラフ51といったふうに言い表すようになった。

 いまでもこの言い方は残っている。外国人の住所はこの表示をする場合がいまだに多く(郵便もこれで着く)、山手病院はブラフ・ホスピタルと呼ばれることが多い。店の名前になっている場合もある。何より横浜の古くからの市民は、この街自体を「山手ブラフ」と呼ぶことすら多いのである。

 この地番はいまも生きている。南北に1キロ、2キロを超す入り組んだ地形の山手町は、1丁目も2丁目もないのである。これは外国人居留区の特徴であって、山下町も同様である。

外国人の住む街=山手で
ひろがった山手エリア

 JR山手駅周辺居住地を最寄り駅で言い表す慣習に従えば、山手駅周辺は紛れもなく「山手」である。

 実際に現地でも、山手町から山元町、仲尾台、滝之上に至る一帯は、山手ブラフの続き、といった感覚でとらえられている。この地帯は山手ブラフから続く道路で結ばれているが、この道路はもともと、居留地の外国人が遠乗り(もちろん馬や馬車で)のためにつくられたものなのである。

 しかも、第2次大戦後進駐した米軍が、根岸森林公園周辺にハウスをかまえたことから、「外国人の住む街=山手」のイメージ連想で、この付近を山手とする考え方が一般的になった。

 マンションに山手の名前を冠したものの所在を調べてみると、その範囲はさらに広がってくる。山手駅をはさんだ立野、矢口台、豆口台、竹之丸、千代崎町、北方町…。そのブランドイメージのよさゆえに、山手は“広がる”気配なのである。最も東南に接する本牧、西南に接する根岸とも決してイメージが悪い場所でもないので、ネーミングを担当する人間の思い入れなのかもしれない。

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並木浩一 [ダイヤモンド社 編集委員]

1961年生まれ。青山学院大学フランス文学科卒、放送大学大学院修了、修士(学術)。編集者・執筆者として長年資格取得のテーマを手がけ、関連の著書に「最新 資格の抜け道」、共著に「『資格の達人」「税理士試験免除マニュアル」(いずれもダイヤモンド社刊)がある。


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成城、白金、鎌倉など、誰もが住んでみたいと思う「憧れの街」。なぜ人々が憧れるのか?歴史や文化的背景、生活環境などを見ながらその理由をひも解いていく。

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