前回の記事では、シングルマザーのH子さん(40代)が親子カウンセリングを通して、娘への教育虐待に気がつくまで過程を取り上げた。改心したH子さんは「そんなに大変だったら、100点取らなくてもいいんじゃないの?」と声をかけるも、娘の反応は意外なものだった。(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)
教育虐待母の改心
娘が見せた“切なすぎる”反応
進学校から転入した通信制の高校を卒業して、娘は希望する専門学校に通い始めた。一見、母娘関係もうまくいったように思えてきたが、そうはいかなかった。学校生活のストレスなどが原因で、娘はうつ病になってしまったのだ。
「専門学校に進学するときも、自分の将来を見据えたうえで志望する学校を選んだので、そこそこうまくいっていると思っていました。ところが、専門学校に通い始めた後、思わぬ“壁”に当たってしまったのです」
「学校でみんなの前でスピーチをしなければならないという課題があり、吃音があり人前で話すことに苦手意識がある娘は、『まったく話すことができなくて悔しい』『みんなの前で発表するのが怖い』と言い出し、それから学校生活をボジティブにとらえられなくなってしまったのです。気持ちと体力の限界に達したようで、学校を休みがちになり心療内科への通院が始まりました」(H子さん)
初診のときに同行しようかと思ったが、娘から断られた。受診し帰宅後にゆっくり時間を作って娘と話をした際、娘の本音と現実を聞かされた。
「中学生のときに自分の思いを表現できなくて、腕を切っていたと聞かされました。つまり自傷行為です。ここ最近もストレスで、しんどいときのはけ口として腕と太腿を切ってしまうときがあると傷を見せられた」