「日本経済新聞」(11月11日付)の記事によると、厚生、国民年金の財政検証に使う予想運用利回りを、来年より現在の3.2%から引き上げる方向で調整中だという。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用利回りは昨年度が6%台のマイナスとなり、今年度も現時点では大幅なマイナスと推察されるなかで、予想運用利回りが上昇するというのは「意外感」があるが、大丈夫なのか。
予想運用利回りは、年金財政の検証を行なう目的では、運用利回りのベストの予測であることが大切だが、他方で「これを目標として年金積立金独法は翌年度からの運用資産の構成割合を決める」と日経の記事にもあるように、事実上の運用利回り目標になる。
高い予想運用利回りを設定すると、年金財政上は将来の負担が軽く見えるが、積立金の運用でこれを達成するためには、より大きなリスクを取らなければならなくなる。予想運用利回りは、間接的に年金積立金の運用内容を決定するといえる影響力を持つ。
GPIFの現行の基本的な資産配分計画(目標)は、国内債券が67%、短期資産が5%、国内株式が11%、外国株式が9%、外国債券が8%だ。おおまかに株式2割と債券8割だが、債券を現在の長期債利回り並みの1.5%(やや甘い想定だ)、株式がこれに5%のリスクプレミアム(ほぼ標準的な想定だろう)を乗せて6.5%として計算した利回りは2.5%で、現在の運用計画を踏襲するならば、これくらいが現実的だ。
現状の予想運用利回りである3.2%はまったく非現実的だ。これをさらに上げることができるというのは、どういう理由なのか。