経済再生・デフレ脱却に偏りすぎて
アンバランスなアベノミクス
安倍政権の経済政策の意思決定はどのように行われているのだろうか。消費再増税延期の際には、経産省出身の秘書官が自ら資料を作り、官房長官などごく少数で再延期を決めた。この事例に象徴されるように、官邸にいる秘書官とその出身官庁である経済産業省のトップなどごく少数の議論で経済政策が決定されているといわれている。
そして経済政策の内容は、経済再生・デフレ脱却に偏りすぎており、税制・社会保障制度の根本的な議論や財政再建問題にはほとんど手が付けられない、アンバランスなものになっている。
経済財政諮問会議や政府税制調査会、あるいは内閣府などは本来、経済・財政・税制の資料作りや議論をする役割を担っているはずだが、「安倍一強」の下で、みんなゴマすり機関に堕している。
しかし経済再生は、総理自ら「道半ば」と言うように、順調に進んでいるわけではない。むしろ混迷の状況にあるという方が正しいかもしれない。それでも国民の政権支持率は高い。これはおそらく、今以上に混迷していた民主党政権よりはまし、ということなのであろう。
本稿では、アベノミクスに欠けていると思われる、税制や社会保障の議論を、一体改革のコンセプトを原点に立ち返って見直すことで、日本経済を活性化させることを提案したい。
税・社会保障一体改革は
なぜ失敗したのか
消費税率を10%まで引き上げて、社会保障を充実させつつ財政再建も行うという「社会保障・税一体改革」は、10%への消費増税が2度延期された時点で失敗に終わったといえる。
しかし社会保障・税一体改革という理念・コンセプトは、わが国の現状を考えた場合極めて重要なものである。では、どうすれば理念を生かしつつ、改革を続けることが可能だろうか。