――これは、見落としがちな観点ですね。

前田 ええ。会社員なら皆さんそうだと思うんですが、誰にだって「これはやりたい!」という前向きな仕事もあれば、「これはやりたくないなぁ……」という後ろ向きな仕事もあります。
 では、それを分ける最大の要因は何か?
 要するに、「やる意義があるかどうか」に尽きると思うんです。
 一見無謀な仕事でも、「意義」を感じられれば、「よし、やってやろう!」となりますよね?
 会社のなかで、その「意義」の根源は「企業理念」にあるわけです。
 ところが、「企業理念」を抜きに「売上」や「利益」だけで考えると、たとえ儲かりそうな仕事であっても、「儲かりそうだけど、やりたくないなぁ……」と二律背反の状況が生まれやすい。
 もちろん、儲けなければなりませんが、それ以上に「理念」が大事なんです。だから、企業理念が浸透していて「うちの会社はこれで世の中の役に立つんだ」という方針が明確な会社では、一時の感情に振り回されずに最後までやりきる強さがある。

――なるほど。

前田 結局、「売上を上げる」「利益を出す」というのは、「最後までやりきる」という信念を強く持って実行した結果としてついてくるものなんですよね。その信念の強さこそが、意思決定の「質」なんだと思います。
 その「信念を強く持つ」という根幹の部分は、やはり企業理念に則って自分の提案をしているかどうかにかかっている。
 これはプレゼンに限らないかもしれません。社内のあらゆるコミュニケーションの根底に、常に、そういう意識が根付いている会社は、強いですね。

横田 確かに、「この提案の背景にはうちの会社の企業理念があり、これで世の中の人々を幸せにできるんだ」というところまで自己解釈ができてプレゼンをする社員と、「とりあえず午前9時から午後6時まで会社にいればお給料がもらえるけど、毎月の提案本数ノルマを稼ぐために一応提案しておこう」という社員では、その内容が違って当然ですね。
 内容以前に、プレゼンのときの目の鋭さや、話し方の勢いにも大きな差が出る。説得力が全然違ってきます。
企業理念をどこまで理解して仕事に取り組めているかどうかが、社内を動かす伝え方の大きなポイントなんですね。「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」でも、お伝えしたいことの1つです。

前田 そのとおりだと思います。