なぜ、経営幹部に
「コピーライティング能力」が求められるのか?

横田 ところで、そのためには、経営陣の伝え方も問われますね?
 企業理念を社員の心に根付かせるためには、そもそも経営陣が上手に伝えておかなければなりません。企業理念だけじゃない。「今年は会社としてこれをやっていく」という方針やスローガンも同じですね。

前田 おっしゃるとおりです。

横田 僕は、企業研修のときによくこんなテストをします。
 受講された社員さんを対象に、「社長が話した今期の方針をどれだけ覚えているか?」というテストです。すると、社員のほとんどが答えられない(笑)。まぁ、企業理念は辛うじてわかっていたとしても、今期の方針は覚えていない。

前田 たしかに(笑)。

横田 これでは意味がないですよね。
 社長は「朝礼のたびに口を酸っぱくして伝えているのに……」「ウチの社員は……まったく」と言うかもしれないけれど、現実に社員が覚えていないわけですから、これは社長のほうに原因があります。「長い」とか「わかりにくい」とか、何かしらの原因があるのでしょう。
 そこで必要なのが、コピーライティング能力です。
 パッと意味がわかって、記憶に粘りついて離れない。そんなワンフレーズを生み出す力があるかどうか。それが社長力を左右すると思います。
 その力があって、粘り強く伝えれば、必ず企業理念やビジョン、方針は社員に浸透します。
 これは社長に限りません。なんらかの方針を部下に伝える立場の人には、身につけていく必要のある能力だと思いますね。そうでなければ、部下を率いていくことはできません。

――たしかに、社長の話が長いと、途中で聞いてませんものね(笑)。

横田 まぁ、現実はそうですよね(笑)。僕がいろいろな会社を見ている中では、サイバーエージェントがコピーライティング能力に長けていると思います。
半期ごとのスローガンを、経営陣が社員にしっかり浸透させているんです。
社長が経営幹部と6ヵ月に1回、スローガンを考え抜いて、全社員に発表しています。
 そして、そのスローガンが、とにかく短くて、わかりやすい。
 これをご覧ください。

 <期>     <半期全社スローガン>
2012年上期 No.1を目指さなければ、憂鬱じゃないじゃない
2012年下期 勝負所、正念場、天王山
2013年上期 続・正念場
2013年下期 熱狂
2014年上期 三倍エージェント
2014年下期 爆グロ
2015年上期 暗闇の中でジャンプ
2015年下期 FRESH!
2016年上期 NEXT LEVEL
2016年下期 低姿勢

前田 おお、これはインパクトがありますね。「爆グロ」ってなんですかね(笑)。

横田 藤田社長いわく、「爆発的にグロース(成長)」という意味らしいですが、僕たち部外者にはわかりづらいものもありますね(笑)。でも、サイバーエージェントの社内ではきっと伝わる言葉なのでしょう。覚えやすいですし(笑)。実際、スローガン発表後は社員がアメブロで自分ゴトに解釈し、書き綴るのが恒例となっています。
 あと注目したいのは、IT企業らしく軽妙なスローガンが並ぶ中にたびたび出てくる「勝負所、正念場、天王山」「続・正念場」「低姿勢」といった泥臭いスローガンです。
 社内の雰囲気を引き締めたいときには、このような厳しいキーワードで警鐘を鳴らす。半期後の未来を予測しながら、正しい方向に社員を導くようにスローガンで誘導しているんですね。

前田 なるほど。すごいですね。

横田 先ほど前田さんもおっしゃったように、企業理念や経営方針、スローガンに沿った提案をするのは社員にとって大事なことです。
 でもそのためには、社長や経営幹部が、社員が受け取りやすいキーワードでそれを伝えてく努力が必要なんですよね。
 企業理念や経営方針、スローガンは、いわば経営陣から一般社員への「プレゼン」なんです。その品質を高めるためにも、リーダーにはキャッチコピー力を身につけてほしいと願っています。ですから、ぜひとも今回初開催となる「プレミアム白熱講座」にきていただきたいですね!

(第2回に続く)