「企業家精神とは、独特の特性をもつ何かである。気質とは関係ない。実際のところ、私はいろいろな気質の人たちが、企業家的な挑戦を成功させるのを見てきた」(ドラッカー名著集(5)『イノベーションと企業家精神』)
ただし、確実性を必要とする者は企業家に向かないという。だがそのような者は、政治家、軍人、船長など、いろいろなものに向かない。いずれも意思決定を必要とする仕事だからである。意思決定の本質は不確実性にある。
意思決定を行なえさえすれば、学ぶことによって、企業家として行動できるようになる。企業家精神とは、気質ではなく行動である。
自覚しているといないとにかかわらず、あらゆる仕事が原理に基づく。企業家精神もまた、原理に基づく。企業家精神の原理とは、変化を当然のこと、さらには健全なこととすることである。
イノベーションが必然である分野、すなわちイノベーションの機会が存在する分野において、資源の最適化にとどまるほどリスクの大きなことはない。したがって、論理的にいって、企業家精神こそ最もリスクが小さな道である。
ドラッカーは、企業家精神にリスクが伴うのは、企業家とされている人たちの多くが、方法論を持っていないからだという。方法論さえ学べば、リスクは急速に小さくなる。
「企業家として成功する者は、女神の口づけやアイデアのひらめきを待ってはいない。彼らは仕事をする。大穴は狙わない」(『イノベーションと企業家精神』)