ホンダの“夢”がついに復活する──。かつて国産初のスーパーカーとして一世を風靡したNSXが、約10年の時を経て、日本市場に再登場した。技術の粋を集めて、米オハイオ州の専用工場で100人ほどの少数精鋭の熟練工が造り込む同車の価格は2370万円。現行日本車の最高値に、ホンダの本気が見て取れる。

新型NSX真の狙いはレクサスと大差のアキュラてこ入れ八郷隆弘社長。不調といわれて久しいホンダだが、伊東前社長の「置き土産」をいかに生かしていくか。手腕が問われるところだ  Photo by Akira Yamamoto

 新型NSX投入の狙いを、八郷隆弘・ホンダ社長は「ブランド力の向上」だと説明する。確かに、短期的に見れば収益に与える影響は小さい。初年の販売目標は、日本でわずか100台、主戦場である北米でも800台。特に、日本では「2000万円を超えるスポーツカー市場が年間約400台」(寺谷公良・ホンダ日本本部長)というから、市場は限定的だ。

 とはいえ、こうしたスーパーカーを造ること自体が企業のイメージアップにつながる上、培われた技術を大衆車製造へと還元していくことも目的にある。「NSXはF1みたいなもの」(同)といい、長期的な投資として割り切っているようだ。

後追いレクサスに敗北

 新型NSX投入にはもう一つ隠れた狙いがある。それは、ホンダの高級車ブランド「アキュラ」のてこ入れだ。同車は米国ではアキュラから販売されている。八郷社長も、「NSXはアキュラのフラッグシップモデルだ」と意気込む。