社員の状況に応じた
きめ細かな対応を拒む人事部

 もちろん、残業をし過ぎたり、有給休暇をとらなかったりして、健康を害してもよいなどと考えているわけではない。ただ、仕事というものは、プロジェクトの状況などで一時的に仕事量が増えたり減ったりするものだ。そんな状況を一切勘案せず、一律に例外なく残業時間制限や、有給休暇を義務化することが問題だと言っているのだ。

 そういう対応をする会社に限って、残業時間制限も守り、有給休暇も取得している社員が健康を害すると「会社としては、きちんと対応しており、問題はない」と言い張ったりする。健康を害していたり、害する兆候が見えたりする社員に対しては、たとえ基準未満であっても、さらなる時間制限や休暇奨励をする必要があるのは当然のことだ。

 こういう話をすると、「人事部は忙しい。そのようなきめ細かな対応ができるはずがない。だから基準を厳格に運用しているのがわからないのか」という反応によく出会う。しかし、これでは努力や改善を放棄した、単なる開き直りではないか。

 できなければ、できる体制を整えるべきだ。そのために、多くの企業で、社員数80人から100人に1人、人事部員がいるのではないか。その人事部員が社員をサポートするケアができないのであれば、そんな人事部員はいらない。

 きっちりとした運用をすることは、ある面で美徳だ。しかし、厳格な対応をするあまり、ビジネス本来の目的を損なってしまっては、本末転倒だ。そのためには、常にビジネス本来の目的、企業のミッションの実現ができているかどうかということに照らしながら、取り組む必要がある。そして、ルール運用がビジネス展開を阻害するようであれば、例外適用すればよい。実際、労働基準法も、労働省告示も、労働局の指導も、無制限にではないが、例外対応がある程度できるように組まれているからだ。

 こうした例外対応を悪用するブラック企業は論外だが、さりとて「例外対応できない」「例外対応しては、労働局から指導を受けるリスクが増大する」と思い込み、コンサバティブになり過ぎて、厳格すぎる対応をしてしまうトンデモ人事部が少なくないことも問題だ。そこには、硬直化した思考停止の状況しか伺えず、柔軟なイマジネーションのかけらも感じない。

 冒頭の診療予約制度を導入したので早くても3時間後でなければ診察できないと言われてたS医院を、ゼイゼイしながら後にして、隣のビルの医院に行った私は、そこでも、「予約はしていますか?」と聞かれた。「また、追い返されるのか…、もう、市販薬で治すしかない」とガックリしつつ、「予約はしていません」と答えると、「では、少々お待ちください」と言われて、数分後には診察を受けることができたのだ。ごくあたりまえの例外対応を忘れてはならない。

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。画像はイメージです。