「えっと、どういうことでしょうか?」
哲学の道の脇に並んだしだれ桜が、夜風に吹かれざわざわとさんざめく。時折、鳴る足元のじゃりとしだれ桜のさんざめく音以外は、あたりに気配がなく、まるで時間が止まったかのように、静寂を保っていた。
男はこちらを見て、そんな静寂を壊すように大きく咳払いをすると、こう言った。
「まあ、つまりだ。たまにお前のような他力本願な人間に教えてやっているのだ。絶対的なものがないこの世の中で“超人”として、強く生きて行くということをな!まあボランティアだ」
「ごめんなさい、えーと状況が飲みこめてないので一つひとつ質問させてください。まず超人?超人ってなんですか?」
「超人とは、どんな辛い状況や苦悩をも受け入れ強く生きる、人間を超えた存在のことだ」
「うーん、わかったようなわからないような……超人にするためにやって来たっておっしゃいましたけど、あの神社とはどういう関係が?なぜ私?神社でお願いしている人はたくさんいたと思うのですが……」
「さっき言っただろう。お前が心のどこかで、私に会いたいと願っただろう?私は、私に会いたいと願ったやつの元にしか訪れることはない。まあいままで会った、私に会いたいと願うやつはたいがい偏屈なやつだが、お前は偏屈というより、無知という感じだな。ハハハハハ!」
男はそう言うと高らかに笑い声をあげた。