2011年に刊行され、ベストセラーになった『人事部は見ている。』。その著者であり、組織と個人の関わりをテーマに執筆を続けてきた作家の楠木新さんが、次に注目したのは経理部である。9月9日に発売された『経理部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)は、サラリーマンにとって、怖い一冊。経費の支出や管理の仕方を通して、その人の人柄やふるまい方を見る経理部の目の付け所に迫っている。

経理部はどういう点を見ているのか?

 唐突ではあるが、みなさんは経理部から「見られている」と感じたことはあるだろうか?

 人事部の場合、その部屋に入るだけで緊張する社員もいる。それに比べれば経理部については、あまり意識していないのではないだろうか。

 目標管理制度や人事評価とは違って、経理部から社員にフィードバックするものは何もない。しかし経理部が直接声を出さないからといって、何も見ていないというわけではない。

 大半の社員の書類は、問題なく処理されている。ただ経理部から見れば首をかしげるような書類が出てくることもある。

「午前零時を過ぎてカラオケボックスで取引先を接待するのは、本当に業務なのか」、「打ち合わせと称して仲間内で飲食しているのは公私混同だろう」、「タクシーチケットを私的に使っていないか」などなど、経費支出に疑問が生じることがある。

 疑わしい経費の支出を繰り返している社員がいると、経理担当者の目は、書類からその背景にいる当該社員に移る。

 そういう「課題」のある社員をリストアップして重点的にチェックしている会社もあった。各営業部署のワースト3を選定しているという。またあるベテランの女性経理担当者は、課題のある社員のことを、「グズ、手抜き、酒飲み、インチキ」と一刀両断にしていた。