“菊のご紋入り”のグラスは
大金を積まれても売れない

――カガミクリスタルは、“競合が存在しない世界”に生きているわけですが、そうした立場に甘んじることなく、この10月1日からはCI(コーポレートアイデンティティ)を導入してブランドイメージを刷新しました。望月社長は、そこにどのような思いを込めたのですか。

 社名こそ変えていませんが、「Feel Japan KAGAMI」を全面的に打ち出すことにしました。ブランドを再構築する目的は、主に2つあります。

 第1に、カガミクリスタルの経営を長期的に安定させるために、ブランドの知名度を上げて確固たるポジションを獲得することです。第2には、唯一無二の製品を手にするという満足度を上げるための関係作りに注力することです。

 Feel Japan KAGAMIという固有のメッセージは、「日本らしさ」を根底に置いています。端的に言えば、京都の龍安寺にある方丈庭園(石庭)のようなイメージです。枯山水は、水のない庭のことで、池などの水を使わずに、石や砂で山水を表現する庭園様式です。弊社には大小数多くの製品がありますが、その一つひとつは「静的なもの」であり、「動的なもの」でもありたいという思いを込めています。製品としての品質が高いことは当然ですが、いろいろな感じ方や楽しみ方ができる特別なものであるということを訴えたい。

 今後は、外国人向けにも、日本らしさを感じてもらえるような特別な製品であることをアピールしたいと考えています。20年の東京オリンピック・パラリンピック大会を前にして、需要構造も変化していくはずです。17年から、過去には他人任せにしていたやり方を止め、自ら主導権を持って製品の直接輸出に乗り出そうと考えています。企業である以上、成長しなくてはなりません。

2016年5月中旬のG7茨城・つくば科学技術大臣会合でも、カガミクリスタルのクリスタルグラスが使われた。皇室関連の行事以外でも広く使われている 写真提供:内閣府、茨城県、つくば市

――仮に、ですが、銀座のショップにお金持ちの中国人旅行者が来て、「いくらでも払う。ぜひ、皇室の菊のご紋を入れてくれ」と言われたら、どうしますか。

 ありえません。菊のご紋入りのクリスタルグラスは、宮内庁や外務省以外に納入することはありません。よく聞かれるのですが、いくら大金を積まれてもダメです。ショップの陳列棚に飾ってある皇室関連の製品は、絶対にお売りできません。この場を借りて、それだけは強調させてください(苦笑)。