17歳の女子高生、アリサが現代に降り立った哲学者・ニーチェと出会い、成長していくという異色の小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』その著者であり、哲学ナビゲーターとしても活躍する原田まりる氏。そして、映画化もされた大ベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者であり、エニアグラムなど心理学の手法を応用して人のタイプを9つに分けてそれぞれの対応法を解説した新刊『人間は9タイプ 子どもとあなたの伸ばし方説明書』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊)も話題の坪田信貴さん。お二人とも学生時代に哲学を学び、造詣を深めてきたという共通点があります。そんなお二人の対談では、それぞれの著書について、そして哲学の魅力について、話が弾みました。今回は後編です。(構成/伊藤理子 撮影/石郷友仁)
私が思うに人生とは「不条理との戦い」だと思うんです。
坪田 原田さんは『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』を読んだ人に、何を感じてほしいと思っていますか?
原田 私が思うに人生とは「不条理との戦い」だと思うんです。自分が選んだわけでなくとも辛い出来事や挫折を体験することもあるでしょう。けれどもそんな不条理に負けずに、一度きりの人生を、後悔せずに生き抜いて欲しい。そのための教えが「実存主義哲学」にはつまっているので、その教えを多くの方に知ってもらいたいという思いで書きました。ニーチェの「祝福できないなら呪うことを学べ」をピックアップしたのも、道徳的ではないニーチェらしい強烈なインパクトがつまった言葉だ、と思ったからです。
坪田 そういえば、紹介している哲学者の言葉は、メジャーなものとは少し違うものばかりですよね。でも、どれもその人の思想を表している。
原田 坪田先生の本に、「芸術家タイプは、メジャーな話題には乗らないし、メジャーな本も読まない」というようなことが書いてありましたが、まさにドンピシャです(笑)。サルトルの「人間は自由の刑に晒されている」という言葉はメジャーすぎるから入れるべきではないんじゃないか?とすごく悩んで……。
坪田 入門書としては入れたほうがいいんじゃないか、でもメジャーだから…と葛藤されたんですね(笑)。結果、メジャーではないけれど真を突いた言葉がたくさん紹介されているという印象です。それに、哲学入門書としてだけではなく、小説としても無駄がないですよね。こだわった点は何ですか?
原田 やっぱり、さっきのレクサスのあたりとか。(*対談の前編をご覧ください)
坪田 (笑)なるほど。
原田 「キャラクターをよりリアルにする」点ですね。それぞれのキャラクターのイメージはすぐに浮かんだんですけれど、細かい設定を考えていく過程では悩みました。実際の哲学者との整合性を保ちながらも現代風に、イメージがかけ離れしすぎないようにと、微妙なバランスで作り込むというか。
坪田 それぞれの特徴を細かく書き出したりしたんですか?
原田 特に書き出すことは…頭の中で考えをまとめるというか。
坪田 芸術家タイプってそういう人が多いですね。感受性に富み、創造力がある。…個人的には、芸術家タイプの子を勉強させるのは、けっこう難しい。人とは異なる価値観を誇りに思っていますから、一つのことに集中させにくいんです。