日本でもそうなのだから、多民族の集合体であり、数多い宗教、宗派が現実的な力を持つアメリカみたいな国で、人気テレビ番組シリーズを続けられるということは、いくら暴言や毒舌をまき散らしているように見えても、実はちゃんと分別のつく人間であるということだ。トランプはそのような世界でも長年生きてきた人物である、ということを理解する必要がある。だから、選挙戦における暴言の数々も単なるポジショントークであったことは、あの勝利宣言での抑制の効いた、人が変わったかのような大人の演説が、それを証明してみせた。

 人は口ではウソをつく。ウソとまでは言わなくても、ポジショントークはやる。だからその人間の発言から、その人物が本当は何者かを判断することは間違いなのだ。しかし、「過去」はウソをつかないし、つけない。過去の出来事とは文字通り、過去に起きたことであり、客観的な事実だ。その人間が過去にどのような状況で育ち、どのような行動をとってきたかの積み重ねが、その人間を形成する。だから、過去を見れば、その人間の「本質」が分かる。

 その意味で、トランプの本質を理解するために役立つのが、こちらの記事だ。トランプの本質に迫った数少ない記事だと思う。

 BuzzFeed 「トランプとは何者か? アメリカ人記者が見た孤独とコンプレックス」

トランプが抱いていた「憧れと憎悪」

 トランプは父親から不動産事業を譲り受け、恵まれたスタートを切った事業家だと思われている。ヒラリーとのテレビ討論でも、「父親から借りた1400万ドルで事業を始めた」と指摘されている。

 しかし、前述のBuzzFeedや他の記事を見ると、トランプの父親が営んでいた事業は、それほど大きなものだったとは思えない。中低所得者向けの住宅を建てて貸し出すようなビジネスを行っていたようだ。トランプも若い頃、屈強なガードマンと一緒に低所得者から家賃を回収する仕事をしていたという。父親が事業を行っていた地区はNYと言ってもマンハッタンの対岸、ブルックリンとクイーンズであり、トランプは父親からこのように言われて育ったという。

以下、『BuzzFeed』より引用


「父はこう言ったものです。『ドナルド、マンハッタンには行くな。あそこは一流だ。俺たちはあそこについて何も知らない。行くな』」


 それゆえにトランプは、マンハッタンへの強い憧憬の念を抱いて育ったと思われる。例えて言えば、北関東で生まれた少年が、渋谷や裏原宿に憧れて育ったみたいな話だ。その後、トランプは(父の言いつけに逆らって)マンハッタンに進出。トランプタワーを建て、世界中に進出して不動産王ともてはやされ、人気テレビタレントにもなった。