米大統領選挙ではまさかの「トランプ氏」が当選した。トランプ政権移行後、自動車業界のなかでは保護主義の色合いに懸念の声が上がっているにもかかわらず、富士重工業は、来年以降、米国の生産増強を本格的にはじめ、現地の雇用も増やす計画である。「米市場の全需の動向いかんよりも、スバル車自体が伸びているので、スバルビジネスを続けていくだけ」と吉永社長は自信を持って語る。

「スバル」ブランドは
なぜ北米で成功したのか? 

   富士重工業は、6月28日の株主総会で、来年2017年4月から従来のスバルのブランド名を「株式会社SUBARU(スバル)」に社名変更することを発表した。これにより、名実ともにSUBARUとなる。これは同社の前身である「飛行機研究所」(後の中島飛行機株式会社)の設立が1917年であり、創立100周年で社名変更を実施するわけだ。歴代の社長がスバルへの社名変更を検討した航空機等多角化事業もあって、なかなか踏み切れなかった経緯もあった。

 スバルの最近の躍進は、一つに今話題の自動運転へのステップとなる運転支援システム「アイサイト」の市場展開への決断がある。アイサイトは、ステレオカメラで常に前方を監視し、必要に応じて車両を制御する運転支援システムだが、これは現在ver.3ではステレオカメラを刷新し、視野角と視認距離を約40%拡大することで認識精度を向上させている。このアイサイトは、スバルの総合安全に対する先行イメージを大きくアピールするものになった。

 一方で、スバルの業績向上の最大要因を一言で言えば、米国での成功である。スバル車は米国ではタマ不足で供給が間に合わないほど、売れに売れている。この11月で丸5年連続の前年実績超えとなり、今期の連結販売見通しは66万1700台(前期比79%増)と大幅な伸びを示すことになるだろう。北米でのスバル車は四輪駆動の技術力には定評があり、もともと、雪の多い地域、山間地域などで人気があったが、かつては地域限定的なものだった。主力車レガシィのサイズアップをはじめ、スバル車の技術力(走りと安全性)の全米訴求、米販売統括会社SOA(スバルオブアメリカ)主導による全米ディーラーのイメージアップなどを展開していくことで、ブランド力を向上させていった。結果、インセンティブ(販売奨励金)が少なくても売れ、収益性が高くなるという好循環を生んだのである。

 前述したように、今期のグローバル連結販売計画が106万2400台(前期比4.5%増)となり、初めて100万台を超える。このうちカナダを含む北米では71万4200台(67.1%)と全体の3分の2という大きなウェイトを占めている。北米での販売と収益の増加がそのまま、営業利益率10%超えという高効率業績に結びついており、北米戦略の成功が最大の主因というわけだ。