海外に留保された巨額の利益が、うまく米国内に還流されれば、米国経済にとっては、きわめて大きなプラスとなる。

 これに対し多国籍企業は、コーポレートインバージョン(外国企業の子会社になる)という対抗手段を持っており、このあたりの駆け引きが注目される。

 以上、述べたトランプ税制改革案の実現可能性を考えるにあたっては、米国では、「税制法案を立案し通過させる権限はすべて議会にある」ということを念頭に置く必要がある。政府(財務省)が案をつくり、国会で審議・議決するわが国との大きな違いである。

 大統領はいわばマネジャーで、自らの公約を実現するには、息のかかった議員に提案をさせ、法案成立のための多数派工作を行う必要がある。ホワイトハウスの議員への根回しがうまくいかないと、税制改革はできない。いかに、ホワイトハウスのスタッフの役割が大きいかということである。

上下院ともに共和党は多数派だが
必ずしもトランプ支持ではない

 これまでの先例を見てみよう。

 2001年に誕生したブッシュ政権は、01年、03年に大幅なブッシュ減税を行うことができた。所得税率の引下げ(39.6%から36%へ)や配当・長期キャピタルゲインへの減税、遺産税の段階的廃止などが行われた。

 しかし、大統領の2期目には、民主党と共和党の共同議長(超党派)のもとで大統領税制改革委員会をつくり具体案を公表するところまで漕ぎつけたが、具体案は法案にならず、議会で一度も議論されることはなかった。

 オバマ政権はどうか。1期目の力のある時期に、ブッシュ政権の下で廃止された遺産税(相続税)を復活させたり、所得税の最高税率を36%から39.6%に引上げたりするなど、民主党色の強く出た税制改革を実行に移すことができた。

 しかし2期目には、共和党・議会が強硬に反対し、バフェット税制(高所得者への課税強化)、法人税改革など税制改革はほとんどできなかった。

 今回は、上下院とも共和党が勝利したので、法律が通りやすい環境はそろったのだが、彼らが投票でトランプを大統領に選んだわけではないので、過半数の党員の支持を取り付けることができなければ税制改革はできない。

 その意味で、トランプ案は出発点に過ぎない。重要なのは、これまで共和党が主張してきた税制改革案を丹念に見ていくことである。この点については稿を改めることとしたい。