2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
実は怒っていた、「できる」リーダー
以前あるプロジェクトで、「めちゃくちゃ仕事ができる」と評判のリーダーと一緒に仕事をする機会があった。
とても感じのいい人で、トラブルの対応力がずば抜けていた。想定外のことが起きたとき、彼女は淡々とやるべきことを判断して行動していく。
だから「このリーダーがいればなんとかなる」という雰囲気があった。私も大船に乗ったつもりでいた。
ただ少しさみしいのは、「私を頼ってくれない」ことだった。
「こんなトラブルが起きちゃった!どうしよう」と言ってくれたら一緒に考えるし、「この部分はお願い」と頼ってくれたら、私も頑張れるんだけどなぁ。
そう思いつつ、リーダーが一人でガンガンこなしていくのを見ていたのだ(自分は自分の仕事を進めた)。
プロジェクトが無事終了し、ほっとしていたときのこと。
リーダーから長文のメールが届いた。
「あなたがちゃんとやらないから私が代わりにやりました。結果的に取引先に迷惑をかけたので反省してください」といった内容だ。
周りに頼らず、一人で進めているのは、そうしたいのだと思っていた。
しかし彼女は、「なぜ私だけがこんなに大変な思いをしているのか?」という怒りを溜めていたのだ。
私の観察力が足りなかったのだろうが、怒っているとはまったく気づかなかった。
責任感が強い人ほど、人に頼れない
そのリーダーは周りから高く評価されていて、責任感も強かったので、人を頼ることが難しかったのだろうと思う。「自分でやったほうが早い」というのもある。
あなたの周りにもそういうリーダーがいないだろうか。
『組織の違和感』(ダイヤモンド社)の中で、組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏はこう指摘している。
職場のリーダーによくある問題として、「他のメンバーに仕事を振れない」ということがあります。役割分担したにもかかわらず、そのとおりに実行できないということも。
または、自分のチームにはこれが足りないと自覚していても、「それでも自分で何とかする」と無理をすることで不足を個人的に抱え込むケースもあります。
――『組織の違和感』p.165より
どんなに仕事ができる人でも、一人で抱え込むのは辛いはずだ。あのときのリーダーには「気づかなくてごめんね」という気持ちがある。
チームのメンバー側も、リーダーの状況を見て「何かできることはありませんか?」と聞くのがいいのだろうなと思う。
観察にもとづき、誰に何をどのくらい振ることができそうか考える
同時に、やはりリーダーも変わる必要がある。
一人で何でもできる人間なんていないのだから、もっとメンバーを頼るべきだ。
勅使川原氏は、「他に頼れる人がいない」と言うリーダーに対して「メンバーの持ち味や武器を、どのくらいご存じですか? 周りは周りで、あなたを助けたいのに助け方がわからないという人もいらっしゃるんじゃないですか?」と聞くそうだ。
チームを良くするため、そしてリーダー自身がつぶれてしまわないために、本気で「誰に何をどのくらい振ることができそうか」を考えなくてはならない。
そのためにも「観察」が大切だ。
すべての力をひとりの人間が備えるのは無理だし、その必要もない。ただし、出発点となる「観察」というスキルだけは、全員が身につけるべきです。
――『組織の違和感』p.168より
本書では観察のスキルを身につける方法が丁寧に書かれている。
一人で仕事を抱え込みがちなリーダーや、そのメンバーにとって非常に役立つ内容だろう。
(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)
小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太