ペニーオークション(以下、Pオクと略す)とは、開始価格や落札価格は通常のオークションに比べると低額であるが、入札する度に「手数料」が必要になるインターネットオークションのことだ。2005年にドイツで開設された「Swoopo」(旧名「Telebid」)が、この形式で行われるサイトの発祥とされる。
昨年末までに、「Pオク」は153サイトも存在していることがわかった。今では、大手企業も参入を始めている。それではなぜ、1年程度でそこまでPオクサイトが急増したのか? それは、利益率が異常に高いからだ。
「Pオク」は、1入札につき75円必要なのが一般的であり、主催企業の利益を算出すると、計算式は「利益=入札ポイント額×ポイント数+落札額-平均小売価格」となる。
たとえば、平均小売価格が11万9800円の最新型ノートパソコンが、5000円で落札された(1入札ごとに現在価格が1円ずつ上昇する)とすると、利益は「75円×5000回+5000円-11万9800円=26万0200円」となる。
このように考えると、「Pオクサイト」が乱立するのも、よく理解できるだろう。Pオクが儲かる証拠に、「Pオクサイト立ち上げパック」なるものを販売している業者が存在するばかりか、「Pオク入札専用ツール」まで販売されている。
この「Pオク」、企業にとってはおいしい事業ではあるが、「実際にどれだけ落札者がいるのだろうか」と疑いたくなるのも事実だ。と言うのも、落札金額のほとんどはクレジットカードでの支払いで、企業に入金されるまでに時間がかかるからだ。資金のある企業であればそれも可能だが、これほど多くの企業が潤沢に資金を持っているとは考えにくい。
もちろん、「Pオク」そのもの、全てを否定するものではない。しかし、運営会社がまともでも、“ビジネスモデルとしては……”との疑問は拭い去れない。と言うのも、現実問題として、独立行政法人国民生活センターに、多数の苦情が寄せられている(報告書本文PDFファイル)からだ。参加するしないは個人の自由だが、苦情の内容だけは把握しておいて欲しい。
また、出自がよくわからない業者が運営するサイトのなかには「特定商取引に関する表記」だけを見ても怪しいものがあるので、利用の際には注意が必要だ。電話番号表記はあっても、直接の問い合わせには応じていないばかりか、中には、携帯電話番号が記されているサイトもある。「特定商取引に関する表記」はあっても、運営会社情報すら定かでないサイトも多く、ドメインが「.jp」で取得されていないサイトも数多い。
一般消費者からすれば、最新型のノートパソコンが5000円で入手できるなら、「Pオク」に参加したくなる気持ちもよく理解できる。また、オークション経験者ならおわかりのように、落札寸前に入札されたら、無理をしてもまた入札をしたくなる。「今度こそ、今度こそ……」という気持ち、これはまさにギャンブルである。
入札にいくら注ぎ込んでも、落札できなければ損をするだけで、これでは一部のサイトが「サクラが存在する」「入札アルバイトがいる」「サイト側が操作している」と噂されても仕方がない。購入したポイントを返金できないことも注意すべき点だ。
24時間「ギャンブル」できるような状況下にあり、最初は楽しいかもしれないが、後々後悔しないよう気を付けなければならない。消費者センターに苦情を申し入れたとしても、「Pオクは射幸心(しゃこうしん)の強いオークションだから注意して下さい」としか言いようがないのが現状ではないだろうか。
「オレオレ詐欺」被害を、当初は「こんなことが……?」と笑って過ごしていたが、その後どんどん被害が膨れ上がり、現在は大きな社会問題となっていることを忘れてはならない。
ちなみに、財団法人日本産業協会では、「Pオク」と通常オークションの比較表と注意事項が書かれているので、参考にして欲しい。
(木村明夫)