知見の伝承を
しやすくするために

 組織において知見を伝承することの難しさは、本人にはあまりメリットがないことです。もちろん、自身のミスを繰り返さないというメリットはありますが、それを組織で共有していくことについて本人にとっては大きなインセンティブは実はありません。

 どうしてわざわざ人のために残さないといけないのか。時間をかけて、自分にメリットがないことをやらないといけないのか、という認識になりかねない。

 そこで一つの方法は、知見を伝承することを組織内で常識にしてしまうことです。そうしたカルチャーを作ることだと、トヨタの仕事術では考えます。

 その方法には、二つあります。一つは、知見を伝承するという行動に対して、上司が認めて評価することです。そしてもう一つが、知見を伝承するための時間を業務として与えることです。

 実際には、自分が例えば異動者としてやってきた場合、知見がしっかり伝承されたマニュアルが組織内にあれば、大きなメリットを得ます。それを認識できたり想像できたりすれば、知見の伝承の必要性を本人も自覚することができます。