【日本企業の“グローバル風”研修3】
無茶ぶり課題系
「グローバル人材育成で大事なもの? 必要なのは、語学でもない、異文化理解でもない、ずばり、タフマインドだけだ!」といった、日本の海外進出が活発であった1970年代、80年代に現地法人立ち上げなど海外でタフな仕事をなさってきた役員のお歴々の言葉を手がかりに、「じゃあ、着のみ着のままでどこでもいいから外国へ行ってきて、我が社の製品が売れるかどうか市場調査してきてよ。とりあえずミャンマーあたりどうだい?」などと、語学もままならない、海外旅行すら行ったことのない若者を送り出すような研修です。
異国の市場をあてどなくさまよいつつ、現地の人との触れ合いの中で得られたリアルな体験は、若者にとって貴重な財産となるでしょうから、その全てが無駄なはずはありません。
ですが、せっかく海外でタフマインドを身に着けた若手人材が、帰国後は元々所属していた海外とは全く接点のない部署に戻り、以前と変わらぬ業務を続けている……、といったケースも少なからずあるようです。
こうなると、その研修は本当に、自社のビジネスのグローバル化に役立つ人材の育成につながっているのか、ということを少し立ち止まって考えてみる必要がありそうです。
ここまで、“グローバル風”研修と茶化して書いてきましたが、私が危惧しているのは、
(1)英語、文化、タフマインドなど、なんとなくグローバルを連想させるものをコンテンツにして
(2)日常の業務とは全く切り離された場で
(3)たった1回の研修をすることで
海外活躍力を高めようとするところにあります。
そもそも一言で「グローバル人材」といっても、求められる能力は各社異なっているはずです。あなたの会社にとって「海外で活躍するグローバルな社員」とはどんな能力を持ったどんな人でしょうか?
それぞれの会社で求められる人材像は異なっているはずです。流行りだからと“グローバル風”研修を導入する前に、まずは自社にとっての「グローバル人材」とはなにか、そこから考えてみていただきたいと思うのです。
(東京大学大学総合教育研究センター准教授 中原 淳)
(構成・井上佐保子)