>>(上)より続く

 ところで夫婦には日常の足として使っている岳人さん名義の自動車がありました。岳人さんが独身時代から乗っている車で、岳人さんが家を出るにあたって、前もって妻に話をすることなく、当たり前のように自動車を持ち出し、そして実家の駐車場に停めていたのですが…岳人さんが朝、目を覚ますと駐車場から自動車の姿が忽然と消えていたのです。

「車はこちらで使わせていただきます!」と義母から岳人さんにメールが届きました。どうやら昨晩、岳人さんが床についたのを見計らって、妻と義母が実家に来て、妻が持っている合鍵を使って、こっそりと走り去ったよう。ほとんど泥棒同然です。

 岳人さんには通勤で自動車が必要なので、最初の1週間は母親に職場まで送迎してもらうなどして急場をしのいでいたのですが、さすがに堪忍袋の緒が切れてしまったようです。岳人さんの母親が週末にはアパートを訪ねたものの、部屋はもぬけの殻で、駐車場にも自動車は停まっていません。そのまま妻の実家へ足を向けたのですが、インターフォンを鳴らしても妻は出てこず、対応したのは義母でした。

「こっちに任せると言ったのはあんたの息子の方でしょ。それなら、いちいち報告する必要なんてないわ!アパートの荷物はすべて処分したし、車だって夫婦の財産でしょ!!」

 義母は母親を突き飛ばさんばかりの剣幕で怒鳴り倒し、そして玄関のドアをピシャッと閉めました。岳人さんは家を出ていくとき、最低限の荷物しか持ち出しておらず、大半の私物は残したままでしたが、義母の言葉から岳人さんの私物は1つ残らず、すべて捨てられてしまったことが明らかになったのです。

 岳人さんは、妻の実家に引き取られた娘さんが心配で、「娘に会わせてほしい」とメールを送り、何度も懇願しました。妻からの返事はなく、義母からは最初のうちは「忙しい」「迷惑だ」「自分から出て行ったのに何様のつもりだ」と断られ続けていました。

断られ続けた娘との面会
来たのは義理の両親と娘

 私のところに相談に来た岳人さんに「自動車は元のところ(岳人さんの実家)へ返すよう、そして私物はすでに廃棄してしまったので金銭で補償するよう求めてもいいのでは?」とアドバイスをしたのですが、後日、事態が大きく進展しました。当初、娘さんとの面会は絶望的だと思われていたのですが、義理の両親が立ち会いのもと、「場所はショッピングモール」「時間は1時間」という条件付で、面会できることになったので、娘さんを連れ戻すことができる可能性が出てきたのです。