環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を目ざしている菅政権内の参加機運がにわかにしぼんでいる。
2月26日、政府は、TPPへの交渉参加に向けた世論を盛り上げることを目的として、市民向け対話集会「開国フォーラム」をさいたま市で開いた。3月まで全国9都市で開催予定であり、今回の会合は、その封切りである。
だが、初回から出鼻をくじかれた恰好だ。
まず、「農業以外にどんな問題があるのか」といった参加者の質問に対する政府側の説明に具体性を欠いていた。そのうえ、あろうことか同じ日に、民主党の山田正彦前農水相らの国会議員180人で構成されるTPP反対派が「TPPを考える国民会議」を甲府市で開いた。政府の思惑とは裏腹で、むしろ反対派の勢いが増しているようにみえる。
そもそも、TPPとは、原則として2015年までに協定国間の貿易において、物品・サービスなどの完全撤廃を目ざした包括的なFTA(自由貿易協定)である。すでに、参加を表明している米国、オーストラリア、シンガポールなど9カ国は枠組み作りに着手しており、具体的な交渉を重ねている。
TPP反対派の急先鋒は、言うまでもなく農業関係者である。反対派の主たる主張は、コメの778%、コンニャク1706%に代表されるように農作物の輸入には高い関税がかけられており、TPPに加わることで関税が撤廃されたならば国内農業は大打撃を被ってしまう、というものだ。
TPPが政争の具となり、反対派の声が大きくなるにつれて、TPP参加における賛否の議論が、物品の“関税分野”へ集中してきている。
だが、TPPへ参加するか否かの結論を下す根拠として、「様々な物品関税の“損得勘定”よりも、TPPへ参加した場合に域内の貿易の基本ルールがどのように着地するのかを知りたい」(電機メーカー幹部)として、“非関税分野”の重要性を指摘する財界関係者は多い。