1時間の立ち話もすれ違いの10秒も、
会話の構成は同じ

齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。
著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である 』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。
撮影/佐久間ナオヒト

 10秒でできる雑談の例を見てみましょう。

A 「お出かけですか、どちらまで?」
→ ステップ1 声をかける
B 「中学の同窓会に。20年ぶりなんですよ」
→ ステップ2 話す
A 「それは楽しみですね。いってらっしゃい」
→ ステップ3 別れる

 これだけのやりとりでも、基本の3ステップを踏んでいることがわかります。
 この3ステップに会話を当てはめれば、どんな状況下でも雑談は成立します。

 雑談するシチュエーションはさまざまですが、1時間の長い雑談も、すれ違いざまの短い雑談も、すべてはこの基本構成をベースにした応用でしかありません。

 最小単位の10秒でできる雑談は、まさにこの基本型をそのまま会話にしたもの。

 たとえば、ある朝のこんな会話シーンもそうです。

A 「おはようございます」    → ステップ1 声をかける
B 「あ、おはようございます」
A 「今日も寒いですね」  
B 「しかも夕方から雨ですって」
 → ステップ2 話す
A 「一応、折り畳み傘は持ちました」 
B 「それなら大丈夫ですね」        
A 「では、また」
        →  ステップ3 別れる

――これで、所要時間は約10秒。

 朝の出がけにご近所さんと顔を合わせ、こうしたほんの10秒程度の雑談を交わすだけで、気分がフワッと軽くなりますよね。これが雑談なのです。

※この記事は書籍『会話がはずむ雑談力』の一部を、編集部にて抜粋・再構成しています。