今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。
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標準的ながんの治療ができる病院
「がん診療連携拠点病院なんて、見たことがない」
こんな疑問をもつ人は多いはずです。それもそのはずで、がん診療連携拠点病院は、個別の病院の名称ではなく、がん治療を進めるための国のシステム(制度)だからです。具体的には、大学病院や各地域である程度規模の大きい病院が、その役割を担っています。
ただし、大学病院や大病院ならどこでもがん診療連携拠点病院になれるわけではなく、「がん治療ができる診療体制が整っているか」「がん治療に詳しい専門医がいるか」「がん治療の実績があるか」など、国が決めた基準をクリアしていることが条件となっています。具体的には都道府県の推薦のもとに、厚生労働大臣が指定しており、主な役割は次の3つです。
・専門的ながん医療の提供
・地域のがん診療の連携、協力体制の構築
・がん患者に対する相談支援や情報提供
がん診療連携拠点病院の役割は、単に専門的ながんの治療を行うだけではありません。拠点病院が中心となって、近隣の中小病院や診療所のほか、訪問看護ステーション、調剤薬局、介護保険の事業所などとネットワークを作り、その時々の患者さんのがんの具合に合わせて、切れ目のない治療とケアを提供していく体制作りを目指しています。
一昔前までは、がんと診断されると、手術や化学療法など専門的な治療のためにがん専門病院に行き、その後の経過観察や緩和ケア、最後の看取りまですべて最初にかかったがん専門病院で、完結していました。
しかし、がん治療の進歩により、治療後の経過がどんどん長く期待できるようになると、がん専門病院だけでは手一杯になってしまい、そこに加えて高齢化に伴うがん患者の絶対数の増加があり、新たにがんになった患者さんへの対応にも限界が生じる恐れも出てきました。
そういった背景から、がん対策基本法の施行をきっかけに、「専門的な治療は、がん診療連携拠点病院」「症状の落ち着いた患者や在宅医療を希望する患者は、地域の中小病院や診療所」と二本立てで医療機関を使い分けるように変わってきています。