作業するスピードはもちろん、質問して答えが返ってくる時間も「遅い」。何もかもが遅く感じました。1社目はたまたまかなと思ったのですが、2社目の赤字会社のときもまったく同じ状況だったのです。そこで初めて、私は「スピード」というものが、会社の利益に影響を及ぼすのではないかと気づきました。

 思い返すと、利益が出ている会社は、会社員時代も含めて、やはり何事も「速かった」のです。社員の書類提出も速い、経理集計も速い、経営判断も速い。それが利益を押し上げている大きな要因の1つではないかと思ったのです。

 であれば、今は利益が出ていないような会社でも、すべてのことを「速く」する習慣がつけば、おのずと利益も改善されるのではないかと考えました。そこで私は、ある赤字会社(製造業)の経営改善の一環として、それを実践することにしたのです。

なぜ、「営業が静かで、経理が騒がしい」と赤字になるのか?

 私が最初にその会社を訪問したとき、営業がとても静かで、反対に経理が騒がしい状況でした。一方で、私が見てきた黒字会社はその反対だったのです。

 常に受注がある会社の場合、営業社員は電話対応や同僚の営業社員・在庫管理者とのやりとりで常に口を開き、動きまわっているので、キビキビと「空気が動いている」のです。そして受注が多いということは、それだけ処理しなければならない伝票がたくさんあるわけですから、おのずと経理は作業に集中し、無口になります。大事な指標は、隣と雑談しながらでは計算できません。

 なぜ赤字会社の経理社員が「ざわざわ」としていたか。それは、それぞれの作業の締切日が徹底されておらず、各々の社員がマイペースで仕事をしていたためです。お互いに協力する環境が整っておらず、「決められた期限内に月次の数字を出す」ということも徹底されていませんでした。だから、各々が自分の都合や主張を前面に出し、「ざわざわ」していたのです。

 そのためまず、「現預金の締めは○日まで、請求書の処理は○日まで」と、毎月徹底して期限を死守する習慣をつけることから始めました。

社内の抵抗勢力「そんなことはできません!」

 最初、みなさんは「無理です。なぜなら……」と、できない理由ばかりを口にしていましたが、それらを1つひとつ潰していきました。