2017年1月20日、ついにドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任する。当選前からその過激な発言やキャラクターについての論評は多かったが、気になるのは経済への影響だ。トランプ新政権の経済政策の中身や、今後の世界経済の動向についてはどのような展望がもてるのだろうか。
トランプは、まだ誰もがクリントン優勢を信じて疑っていなかった2016年9月、ニューヨークで行われた講演会で、初めて自らの経済政策構想について語っている。その時点からトランプ発言を追い、もし彼が大統領になった場合に経済領域で何が起こるのかを客観的に検討してきたのが、エコノミストの安達誠司氏である。
安達氏は『ザ・トランポノミクス 日本はアメリカ復活の波に乗れるか』(朝日新聞出版)で、トランプの経済政策構想(トランポノミクス)が現実化すれば、アメリカ経済は「大化け」すると予測している。アメリカ経済はリーマン・ショック以来の低迷を脱し、日本経済も長年苦しんできた長期停滞を打ち破るきっかけになりうるというのだ。
トランプの経済政策のポイントを大きく分けると、(1)大型減税、(2)規制緩和、(3)インフラ投資である。具体的には、(1)法人税の大幅減税、所得税の税率適用区分の簡素化と税率の大幅引き下げ、各種控除の拡充、相続税の廃止など、(2)規制緩和については、オバマ大統領が推進した「パリ協定」にともなう環境政策の停止、(3)従来老朽化が指摘されてきたインフラ(道路、橋、鉄道、港湾など)の整備拡充などがあげられている。これらに通商・貿易政策を加え、10年間で2500万人の雇用を創出、年平均で実質3.5%の成長を実現させるとしている。
安達氏は、これらの政策を、不況時に財政支出や減税を行うことで需要の拡大をもたらす「ケインズ効果」を明確に狙ったものとして大いに評価している。
現在のアメリカ経済は、リーマン・ショックという未曽有の金融危機を三度にわたる量的緩和策(QE)によって克服したものの、その後もずっと低成長が続いている状態だ。トランポノミクスが現実に実施されれば、目下の課題である「長期停滞」を抜け出し、中間層の復活もある程度見えてくるはずだ。