日本でお馴染みの「クロネコヤマトの宅急便」が、海を渡って中国でも勢力を拡大している。彼らは中国でも、「宅配ビジネスの雄」となることができるのか? 現地合弁会社の責任者に、中国市場の現状と現地戦略の要諦を聞いた。
――ヤマトホールディングスが宅急便事業を中国で始めた経緯を教えてください。
ヤマトホールディングスのグローバル戦略「アジアに宅急便事業を展開する」の一環として、上海でも、2010年1月に宅急便事業をスタートしました。上海と同時期にスタートしたシンガポールの他、2011年2月からは香港でも宅急便事業を始めました。
上海で宅急便事業を展開するヤマト(中国)運輸有限公司は、日本のヤマト運輸が65%を出資し、上海巴士物流と合弁で設立した会社です。残り35%はもともと上海巴士物流の株主だった上海金剛投資有限公司(上海の物流企業向け投資会社)と上海久事公司(上海市100%出資する総合投資会社)が半分ずつ出資しています。
――今のところ、中国における宅急便事業の展開エリアは上海のみですか?
現在、自社の配送ネットワークを整備して配達しているのは、上海と香港のみです。ただ上海市は、崇明島まで含めた上海市全域をカバーしており、全部で6300k㎡の広さ(群馬県と同じ)があります。また1日当たりの取り扱い量は、多いときで1万個に上るほど急激に増えています。
――上海では、宅急便のトラックの台数に規制があると聞きましたが。
上海では、「BHナンバー」をつけた商用トラックのみが内環状線の内側(市中心部)に入ることを許されています。そして、そのBHナンバーの取得は許可制となっており、新しいBHナンバーの許可は、なかなか降りないと言われています。
ヤマト(中国)運輸有限公司は、合弁会社設立時に新たに210台のBHナンバーを取得し、現在は130台のトラックが稼働しています。トラック以外に、電動自転車も70台程度使って配達しています。
――法人需要と個人需要では、どちらが多いですか?
現在は、通信販売を中心としたB2C需要が8~9割を占めます。もともと中国には、C2Cの宅配市場はほとんどありません。中国では日本のように、お中元、お歳暮、誕生日のプレゼント、バレンタインデーのチョコレートといった贈り物を宅急便でやりとりする習慣がありません。