「大きな目標」を意識することで努力が継続できる

―――そもそも、なぜ選手たちに教えることを始められたのでしょうか?

中西哲生
スポーツジャーナリスト、元プロサッカー選手。1969年愛知県生まれ。同志社大学経済学部卒業。Jリーガーとして、名古屋グランパスエイト、川崎フロンターレで活躍。2000年末をもって現役を引退。現在はスポーツジャーナリストとして「サンデーモーニング」(TBS)、「Get Sports」(テレビ朝日)でコメンテーターを務めるほか、「中西哲生のクロノス」(TOKYO FM)でパーソナリティを務めている。

中西 僕はテレビ番組でのサッカー解説でよく、動きを注目してほしい選手に丸をつけたり、動きをスローモーションにしたりしています。その編集をやっているうちに、だんだんと「これは日本人の動きと根本的に違うなあ」とか、「蹴り方やトラップが全然違うな」ということが見つかるようになって、これは直接、選手に伝えたほうがいいなと思ったんです。

 最初は、一緒に自主トレをしていた中村俊輔選手に「こんな蹴り方があるよ」と映像を見せていた程度だったんですけど、だんだんといろんな選手たちから「一緒にトレーニングをしてもらえませんか?」と言われるようになって。

 それで、そういった動きができるようになるための正しいフォームも研究して、選手にフィードバックするようになったんです。

 僕には、なんとしても日本がワールドカップで優勝する瞬間を自分の目で見たいという目標があって、そのためにできることは何だろうと考えると、いま自分が気づいていることをすべて選手に伝えることだと思うんです。

『GRIT やり抜く力』の中に、「ある人がレンガ職人に『何をしているんですか?』とたずねた」という記述がありますよね。

 みんな「レンガを積んでるんだよ」とか「教会をつくっているんだよ」と答えるなか、「やり抜く力」が強い人は、「歴史に残る大聖堂を造っているんだ」と答えたというエピソード。

 自分の仕事が大きな目標につながっていると感じている人ほど「やり抜く力」が強いという話でしたが、じつは僕は10年くらい前からずっと「ワールドカップ優勝!!」ということを、サインを求められたときに書かせていただいてきました。

 それでこの本を読んで、そういう大きな目標があるから地味なこと、地道なことを続けることも苦にならないんだなと気づいたんです。いままで自分がやってきたことの答え合わせができたようで嬉しかったですね。