IQや才能など生まれつき備わっている能力よりも、「やり抜く力」こそがあらゆる成功のカギだという研究成果をまとめ、世界的な話題となっている『GRIT やり抜く力』(ダイヤモンド社)。昨年9月に日本でも発売されると、あっという間に25万部のベストセラーとなった。そこでこの本の愛読者で、「事あるごとに読み返しては参考にしている」というスポーツジャーナリストの中西哲生さんに、「やり抜く力」がある選手について、またご自身が「やり抜く力」を身につけた出来事について伺った。(構成:山本奈緒子、写真:柳原美咲)

一流のアスリートは「地味なこと」をしつこく続ける

―――『GRIT やり抜く力』を読まれた印象はどのようなものでしたか?

中西哲生氏(以下、中西) 僕はスポーツ解説の仕事で多くのアスリートに接していて、サッカーに関してはパーソナルコーチもさせていただいているんですが、この本はトップアスリートたちの共通点をまさに言い当てているなと思いました。

 いまは、セリエAで活躍する長友佑都選手と、なでしこジャパンのエースストライカー・永里優季選手、Jリーグ出場の最年少記録を塗り替えたFC東京の久保建英選手にアドバイスをさせていただいているんですけど、彼らは皆、このグリット(やり抜く力)が非常に強い。まさに本でも書かれている通り「やり抜く力」において重要な「情熱」と「粘り強さ」を合わせ持っているんです。

―――具体的にはどのような「情熱」と「粘り強さ」を持っているんですか?

中西 僕のトレーニングというのはものすごく地味なんですね。というのも、正しいフォームをつくるための正しい呼吸や正しい関節ポジションを探すという作業がメインです。

 だから一度だけしか来ない人も多いんですよ。もうつかめたと思うのかもしれないし、もしくはこんなのでうまくいくのだろうかと思うのかもしれない。

 でもその3選手だけは、何年もずっと来続けているんですよね。しかも僕から声をかけているわけではなくて、自分から「次は、いついつにトレーニングできますか?」と連絡してくるんです。