放射性物質汚染の工業製品への風評被害が広がっている。この状況が続けば、日本の製造業、特に中小事業者は大打撃を受ける。
商船三井のコンテナ船が、中国の港で放射性物質汚染の恐れを理由に足止めされた。日本貿易振興機構では放射能の影響で工業製品の輸出に影響が出た際の相談窓口を設置したが、相談は1週間で130件を超えた。
そのうち15件が実際に輸入を拒否されたケースで、相手国の輸入業者、小売り業者などから「汚染されていないという証明書がなければ受け取れない」と拒まれた。
あわてた企業が駆け込むのが、放射性物質の検査機関だ。ある機関では「普段はほとんどないが、震災以降急激に増え、1週間で数百件以上の依頼が殺到している」。
この団体では50個しかない検査用のセンサーを補充しようとしたが、メーカーには在庫がなく、需要急増に応えられていないという。
輸出する会社にとっては費用と期間が問題になる。愛媛県今治市にある会社は輸出した高品質タオルがローマ空港で足止めされたため、現地で数万円支払い検査を行った。
日本でも検査には数万円が必要で、検査期間は通常時でも1週間、殺到している現在の状況では「どれくらい時間がかかるかわからない」(検査機関)のが実情だ。四国タオル工業組合の関係者によれば、タオルの1回当たりの出荷額は数万円程度。「検査費用に数万円かかるのでは輸出は不可能になる」と頭を抱える。
被災地の復興に併せて、政府は「日本の工業製品は安全である」というメッセージを世界に向けて発する必要がありそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)