日本のビジネス書が
海外で売れるためのカギとは?
海外のビジネス書と比べてみると、日本で売れるビジネス書は、組織を変えようとするものより、自分を変えようとするものが多いのがわかる。
傾向としては、明日から自分でできる人間関係のスキルアップの啓蒙書、成功した商品やサービスをめぐる舞台裏のドキュメントもの、それと他の国では見かけないけれど日本にはいくらでもあるのが「ハーバード流」ナンチャラというタイトルが付いている本。
一方で、日本のビジネスコンテンツで海外に紹介されている本の傾向を見てみよう。日本でそれなりに部数が出たビジネス本は、先述の中国、香港、台湾、韓国といったアジアのテリトリーでは、黙っていても向こうから版権のオファーが来る。英語圏やヨーロッパでのニーズがあるとしたらどんな本だろうか?
もちろん日本経済バブル期など世界中が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと強気でいられた時代に発信したコンテンツが注目された時期もあった。“Kaizen”という言葉が入ったビジネス本も出回り、ビジネスボキャブラリーの一つとなったぐらいだ。
だが、経済が停滞し続けるこの10数年は、「日本のビジネスとは~」「我々日本人の働き方は~」と謳っても興味を持ってもらえる人はごくごく少数だ。
ジャパン大好きのビル・ゲイツが孫正義の『志高く』(実業之日本社)を読んでブログで「面白かった」と書いてもなかなかベストセラーには結びつかない。楽天の三木谷浩史もアメリカのセント・マーティン出版やワイリーといった大手出版社からビジネス書を出しているが、「日本でこうやって成功しました」という内容ではなかなかヒットに結びつかないようだ。
それよりも、ありきたりでどこの国でもいくらでも本が既に出ている「整理法」ジャンルで、頭ひとつ抜けた個性が世界的ヒットに結びついた近藤麻理恵の『人生がときめく片付けの魔法』(サンマーク出版)のように、「日本で流行っている○○~」ではなく、ポジティブに、そしてどこかオリエンタルでスピリチャルな雰囲気を感じさせるメッセージの方が、世界では新鮮に響く可能性があるのだろう。