ニューヨークと東京を往復し、世界中の書籍コンテンツに精通するリテラリーエージェント大原ケイが、トップエリートたちにいま、読まれている話題の最新ビジネス書を紹介する好評連載。第5回目は、トランプ就任とビジネス書業界への影響について。

ニューヨークにはトランプ関係本はほとんど並んでいない

 アメリカではドナルド・トランプの大統領就任式が1月20日に行われた。

 この先、具体的にアメリカの内政がどのように変わり、それが日本にどのような影響を及ぼすのか、おそらく誰にもわからない。ここニューヨークの書店には、トランプ関係の本はほとんど並んでいない。流通システムの違いもあってアメリカでは「即席本」が作れないせいもあるのだが、なぜか日本の書店の方が「トランプ時代はこうなる!」と断言した本や雑誌が所狭しと並んでいる。

 若い頃からビジネス書の類でさえ、一切本を読まないとされる大統領が誕生した国で、みんなこれからどんな本を読みたいと願うものなのだろうか?

 一方で「ホワイトハウスを去ったら、何をするつもりか?」と聞かれたオバマ大統領は、「まずは家族とゆっくり過ごすのが望みだが、そのうち本を書きたい」と答えている。思慮深く、スピーチが上手いと定評のあったオバマ大統領だが、彼は弁護士の資格を持ち、憲法解釈の専門家でもある。

 そのバラク・オバマが最初に書いた本、1985年の『Dreams from My Father(邦題『マイ・ドリーム』ダイヤモンド社)』をアメリカで上梓したのはタイムズ社で、その後も2008年の大統領候補として『Audacity of Hope(邦題『合衆国再生』ダイヤモンド社)』を書き、その印税が大統領としての給料以外の唯一の収入となっていた。自伝すらもゴーストライターに書かせた新大統領と対照的だ。いずれオバマの新作が発表されるだろう。

 フェイクニュースがまかり通り、外国のリーダーとの癒着が当たり前の「ポスト真実」の時代を迎えて、アメリカのビジネスリーダーやリベラルな人たちが気づいたのは、今までSNSで「シェア」してきたニュースや意見は、仲間内の“エコー・チェンバー”になっていただけで、自分たちが知らない田舎で失業しているアメリカの人たちとは何も共通点がなく、対話もできていなかったということだ。