本年度アカデミー賞の長編アニメーション部門と主題歌部門にノミネートされたディズニー・アニメーション最新作『モアナと伝説の海』。3月10日の公開を前に来日した、ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ両監督がインタビューに応じた。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
最初の視察旅行で会った
タヒチの長老の話
──今作は、南の島の少女モアナが大海原を舞台に冒険をする作品です。モアナは崖を登ったり、敵と戦ったりするなど強い”プリンセス”で、作品にはロマンスもありません。モアナが祖先の霊と共に航海をするシーンが印象的でしたが、ディズニーらしくないですね。いかがでしょうか。
ジョン・マスカー らしくないとは、その通りかもしれませんね。
ロン・クレメンツ ええ。これまでディズニーが手掛けてきた多くの作品には、欧州の民話やおとぎ話に基づいた西洋的な要素が含まれています。ですが今回、われわれはオセアニアを舞台にした作品を作ることにしました。
最初から今までと違うプリンセス像を狙ったわけではありません。視察のために実際にオセアニアの島々を巡り、物語を作っていく中で自然とそうなっていきました。
特に、そこに住む人々が祖先とのつながりや自然との関係をとても大切にしていることを知りました。
マスカー そうですね。タヒチからハワイまで伝統的な船で実際に航海した、若い女性の船乗りに話を聞きました。彼女は「エイやサメのような海の生物が祖先のように自分たちを見守ってくれている」と言うのです。
また、最初の視察旅行でお会いしたタヒチの長老の話が忘れられません。「何年もの間、私たちはあなた方の文化にのみ込まれてきた。一度ぐらい私たちの文化にのみ込まれてはみませんか」と。