本来はフォークリフトが行き来する倉庫内の通路に、クリーム色の板の山が並べられていた。幸一がその合間を縫うように歩き回り、手にした含水計で無差別に計測して確かめていく。その間に、リムは大声を張り上げて四人のレイバー(作業員)を召集した。

「乾燥は問題ないようだね。それに、挽きもまずまずだ」

 一通りチェックした幸一が、リムへ声を掛けた。

「当たり前さ、コーイチがよちよち歩きをしていた頃から日本へ敷居を輸出しているんだ」

 リムが自慢げに言う。

「ざっと100リューベー(m3)というところかな。じゃあ、検品を始めようか」

「ああ、頑張ってくれ。俺は事務所で待っているよ」

「たまには付き合ったらどうだい? ウエストも縮むよ」

 幸一の憎まれ口に応じることなく、リムは踵を返して去って行った。

「さて、始めるか」

 地べたに転がっていた白チョークを拾い上げて一番手前のメルサワの山へ近づき、横でたむろしていたレイバーたちを呼び寄せる。

 メルサワは比重の高い木材で、4メートルの敷居ならば1本で10キロほどの重さになる。一人では動かすのに難儀するし、とても何百本も動かす体力の自信はない。幸一が板の脇から見て不具合がないか検品をし、二人一組となった彼らが、チェックの済んだ板を左右から抱えてずらしてくれるという手順だ。

「バグ―ス(良し)……、バグース……、ティダバグース(だめ)……」

 幸一がマレー語で宣言しながら板面にチョークで印を付けると、それに従って彼らが良品と不良品とに分けた新たな板の山を築いていく。吹き曝しの倉庫は風が吹いているうちは爽快だが、一旦空気の流れが止むと、ここが赤道に近い南国であることを思い出させるように暑気が立ち昇ってきて、幸一の全身にある汗腺から水分を滲み出させる。

 かなり陽が傾いた頃になって、ようやくリムが顔を出した。

「どうだい、今日中に終わりそうか?」

「ああ、もう少しだよ」

 幸一が腰を伸ばしながら答える。リムが検品済みの山を見渡した。