「好調だと聞いていたが、この数字は想像以上だ」(業界関係者)。今のユニクロの勢いには、業界内の誰もが舌を巻く。
ファーストリテイリングが発表した11月の国内ユニクロ事業の既存店売上高は前年比32.2%増となり、単月では過去最高の売上高を記録した。発表翌日12月3日の同社株価はストップ高。翌4日も値を上げ続け、過去5年間の最高値である12830円に迫る勢いだ。
11月は休日が3日多かったとは言え、現在、衣料品の販売状況はどん底。百貨店の衣料品売上高は総崩れで、しまむら、ポイント、ハニーズなど他の衣料品専門店各社の既存店前年同月比も軒並み前年割れだ。文字通り、ユニクロだけが好調なのだ。
最大の要因は、春夏商品の処分を前倒しで行ない、秋冬商品の展開を昨年よりも早めたことが挙げられる。加えて、現在同社では500坪前後の大型店を大量出店している。売り場面積が広がったこともあり、8月後半には大型店舗を中心にダウンジャケットなどの秋冬主力商品を並べることができた。その結果、ユニクロの秋冬商品の認知が上がり、気温が下がった9月中旬に、売り逃がしを最小限に抑えることができた。
また、すべての基本となる「商品力」を伴っていることも現在の好調を支えている。ヒット商品「ヒートテックインナー」は、現在の品質に至るまで約5年の歳月を費やしている。発熱性、保温性、保湿性、ストレッチ性、抗菌防臭性の5つの性能に加え、風合いと着心地の改善を繰り返した。「何度作り直したか分からない」(白井恵美執行役員商品本部ウィメンズMD部部長)ほど改良を重ねた。
こうした地道な努力が今期、ようやく花開いた格好だ。「ヒートテックインナー」は、今期2800万枚の販売計画を立てている。
課題をあえて挙げるなら、販売予測と生産計画に、今年も若干のズレが生じていることか。昨年同様、冬本番を迎える前に「ヒートテックインナー」の一部の色、サイズでは既に品切れ状態となってしまった。
このズレを克服することは同社にとっての永遠のテーマとなるだろうが、いずれにしても消費不況の中で、売り切れ商品が出てしまうほど顧客に支持されているユニクロは、他の多くの小売企業からは見れば、羨望の存在だろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)