なんとなく不安を感じながら、先送りしたくなる「介護」の問題。しかし、内閣府の発表によれば、介護保険制度で「要支援」「要介護」と認定された人は2013年度末で約570万人にのぼり、日本は、「誰もが介護し、介護される」“大介護時代”に突入しています。いざ介護の問題に直面すると、いろいろ調べる余裕もないまま、目の前のことに翻弄されるばかり。そこで、介護認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟、の家族3人を21年間にわたって1人で介護し、ブログ「介護に疲れた時、心が軽くなるヒント」を通じて介護する人たちの悩みを解消してきたリハビリの専門家(理学療法士)が、 いざという時に困らない「介護の心を軽くするコツ」を紹介します。
「3人きょうだいの末っ子です。成績のよい姉や兄は母から可愛がられていましたが、私は彼らと比べられてばかりで“お前はダメだ”と言われて育ちました。そんな私がなぜ今、母の介護をしているのか…。幼いときのことを思い出すとかなり葛藤があります」
Nさん(50代女性・主婦)は、脳出血で倒れた母親の世話をしています。
姉や兄はすでに家を出てしまい、結婚後も実家に残っていた彼女が介護をせざるを得ません。
娘の義務だと思う半面、3人きょうだいの中で一番、可愛がられなかった自分が介護を担っていることを理不尽に感じています。
母親は認知症の傾向もあり、今でこそNさんに頼っていますが、以前はケンカが絶えず、出来のよい姉や兄と比較され、子どもの頃はつらい思いをしてきました。
そんな自分に世話をさせている母親に腹が立ち、憎しみを感じることもあります。
昔のことは水に流して、大切にしてあげようと思う半面、なかなか怒りが抑えられないのです。
「こういう気持ちのまま、介護をしていては、いつか爆発してしまうのではないか」とNさんは自分自身が怖くなるのでした。