子どもの頃に別れた親の面倒は見なくていい

離婚して疎遠になった親、失踪して音信不通だった親が病気になり、突然、病院や役所から連絡がきたというケースもあります。
いくら血がつながった親でも、何年も会わず、交流がなかったわけですから、なかなか介護をする気持ちにはならないのではないでしょうか。

経済的に余裕があれば、介護に関わる費用だけを負担する。
余裕がなければ、申し訳ないが、援助はできないとお断りする。
そういう対応でもいいのです。

中には、幼い頃に失踪した父親が倒れたという連絡が入り、母親と一緒に力をあわせて、介護したというケースもあります。

ほかにも、仕事一筋で母親を泣かせてばかりだった父親が50歳で末期ガンの宣告を受けたことがきっかけで、子どもの頃から「おはよう」の挨拶すら交わさなかった息子が、最後の1ヵ月を一緒に過ごす中でフィアンセを紹介したり、将来について語ったりしたことで「看取りができて幸せだった」というケースもあります。

このように、介護を通じて家族の絆を取り戻せた幸せな事例もたくさんあります。
しかし、つらい気持ちを我慢してまで「子どもだからがんばらなければ」と考える必要はありませんし、いったん関係がとだえた親の介護を引き受けるのは子どもの義務ではありません。

世間体を気にすることなく、自分の感情に正直になって、できることだけをする。
あるいはできないと伝える。
誰に何と言われようが、あなたの気持ちを一番に守ってください。

●ポイント
親子関係にわだかまりをもったまま、親の介護に向きあう人は少なくありません。
きょうだいがいても、親と一番ソリがあわなかった人が介護を担わざるを得ないケースもよくあります。

介護自体が大変なのに、自分自身の中にある怒りや悲しみと向きあわなければならない。とてもつらいことだと思います。

でも、そういったマイナス感情も、あなたの大切な心の一部です。
無理に抑え込もうとすると必ず爆発してしまいます。
自分より弱い立場の人に向けての虐待になったり、介護うつの引き金になったりします。

まずは自分の感情を正直に認めましょう。
そして、自分の気持ちを素直に「出す」ことで発散させてください。