ところがである。後任が決まったにもかかわらず、社長交代の記者会見は開催されずじまい。「新体制が整い次第、会見する」としているが、具体的な日付は9日時点で未定のままだ。

 ちなみに10日には、新たな収益源と期待されていた、レストラン事業の記者会見が予定されていた。それも8日になって突然キャンセル。未定であるはずの「新社長の会見準備を広報が行うため」というのが理由だ。

 突然のトップ交代は、社内にも波紋を広げた。三越伊勢丹HDでは通常、3月初旬から春の人事異動の内示が行われる。今年も、すでに一部の幹部には内示されていたのだが、トップ交代に伴って「全て杉江新社長の新体制で決め直す」(三越伊勢丹HD)として白紙に戻された。

 また、見逃せないのは、7日に発表された人事は、あくまでHDの社長に関してだということ。中核会社である百貨店の三越伊勢丹の社長については、これまた未定のままなのである。

求心力を失わせたマネジメント手法 擁護する役員も不在

 何から何まで決まっていない中、“新聞辞令”で大西氏の退任だけが進むという異例ずくめの展開の背景には何があったのか。

 業界内には、昨年末から社内外に飛び交っていた、大西氏の経営手腕を疑問視する「怪文書」が理由だとの声がある。

 内容から見て、発信源は経営統合以降抑え込まれ反発していた旧三越出身の一派とみられているが、不穏なムードが流れていることを社外取締役などが問題視したというのだ。

 だが、三越伊勢丹HDのある幹部はこうした見方を否定し、「伊勢丹や三越という出身に関係なく、多くの役員や部下が大西さんから離れていった」と打ち明ける。

 大西氏が求心力を失った一因に、「外にしゃべって社内にやらせる」と社内でやゆされていたマネジメント手法がある。

 発端は昨年11月、「抜本的な構造改革」を行うとして、伊勢丹松戸、伊勢丹府中、松山三越、広島三越の4店を名指ししたことだ。

 大西氏には、店舗閉鎖や人員削減を行う意図はなかったのだが、機関決定した内容ではない上に、店舗閉鎖と捉えた取引先から問い合わせが殺到。現場は大混乱に陥り、会社側は火消しに追われた。