2008年に発足以来、百貨店業界における売上高規模で国内トップを誇る三越伊勢丹ホールディングス。業界で先駆けて世界にも進出し、さまざまな仕掛けを次々に展開している。百貨店業界が不況と言われる昨今においても、同社が圧倒的な存在感を放つ理由は何なのか。改革の根幹を、社長の大西洋氏に話を聞いた。
新規事業で4割の売上をつくりたい
多田 大西社長はさまざまな改革に取り組んでいらっしゃいますが、その中でも注力している改革について教えてください。
大西 1つはSPA事業(製造小売業)への参画です。百貨店がここ20年の間苦戦している一方で、ニトリさんなどのSPAが増収増益を続けているのは、まさに「お値段以上」の商品を提供しているからなのだと思います。百貨店の場合はサプライチェーンに無駄があり、各工程でコストが発生しています。そのため、価格に見合った価値のある商品を提供することが難しいのです。そういった課題を今後4~5年間で解決していこうという取り組みをしています。
もう少し具体的な話をすると、当社の売上の85~90%が百貨店で構成されていますが、百貨店事業での売上が90%以上を占めている企業は今後縮小していくでしょう。百貨店だけに依存しないためにも、今後5年間で新規事業を立ち上げて百貨店の売上比率を60~70%程度にするつもりです。
多田 今回「百貨店の売上を6割にする」という意思決定をされたのは大西社長の中で何か意識改革があったからなのでしょうか。
大西 このまま百貨店事業に依存していては成長しないと思ったのです。新しいことをやっていかないと競争力がなくなっていくので、将来的には、旅行、レストラン、カフェ、ウェディング、ホテル、不動産などの事業を視野に入れています。もちろん、何にでも手を出すというわけではなく、あくまで当社にロイヤリティをお持ちいただいているお客様のライフスタイルをより豊かにする事業であることが大前提です。